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 即席映画狂 第3部【151】〜

 ※黄金時代の日本映画を、にわかマニアが2010年代からランダムに振返る。
  時にお節介に、データの押売が鼻につくも、御容赦。
  脚本、プレスシート、キネ旬等の資料を鵜呑みにせず、鑑賞による検分にて。
  各作品を観ていない方に、梗概を説明する趣旨ではありません。
  観終わった後で、思い出す助けにでもなれば。

   即席映画狂 トップページ[最新] ▼第3部最古【151】音楽喜劇 ほろよひ人生(1933)▼
   【01〜100】第1部 【101〜150】第2部

【00】シリーズ刑事物語(1960〜61) →【特集】


【200】香江花月夜 HONG KONG NOCTURNE(1967邵氏兄弟・香港)監督;井上梅次
  →
【201】 ▼【199】

何莉莉 Lily Ho……「ツイツイ」(字幕)長女「賈翠翠」<水谷良重
鄭佩佩 Cheng Pei-Pei……「ジエンジエン」次女 ※発音はジュエンジュエンの方が近い(賈娟娟)<倍賞千恵子
秦萍 Chin Ping………「ティンティン」三女「賈婷婷」<鰐淵晴子
蔣光超……老手品師、三姉妹の父「賈似眞」<有島一郎
陳厚 Peter Chen Ho………(砂塚秀夫似)「チェン」、作曲家 長女を慕っていたが、次女と結婚 <吉田輝雄
凌雲 Ling Yun………(佐原健二似)「ファン」、トランぺッター、台北で長女と心を通わせる <佐田啓二
田豊………(浜村純似)バレエの先生、三女を猛特訓、プリマに育てる <根上淳

「踊りたい夜」(1963)を監督自身が、香港のショウ・ブラザーズでリメイク。
設定に若干の手が加えられ、オリジナルには無い、三女を慕う若いダンサーの役が
登場したり、次女は飛行機事故で亡くなる夫の子を身ごもっていたりするが、大筋
は同じ。まったく同じ演出のシーンもあって嬉しい。楽曲は、広瀬健次郎に代わっ
て服部良一で、全体に原作より優雅か。「海を渡ってショウが――」というテーマ
曲くらいは踏襲してほしかった気もする。
 次女役のチェン・ペイペイは、倍賞千恵子のイメージを良く継承し、なお南果歩
を足した顔。
 ラストのステージシーンに、ピンクタイツをオマージュした衣裳あり。

   →後【201】 ▼前【199】  ▲ページ冒頭▲



【200】香港ノクターン(1967)
【199】赤ちゃん特急(1956)
【198】私はモスクワを歩く(1963)
【197】高校生芸者(1968)
【196】星の瞳を持つ男(1962)
【195】一心太助 天下の一大事(1958)
【194】大巨獣ガッパ(1967)
【193】東京マダムと大阪夫人(1953)
【192】ニコヨン物語(1956)
【191】花札渡世(1967)
【190】東京犯罪地図(1956)
【189】陸軍落語兵(1971)
【188】刑事物語 犯行七分前(1961)
【187】刑事物語 ジヤズは狂っちゃいねえ(1961)
【186】刑事物語 殺人者(ころし)を挙(あ)げろ(1960)
【185】素浪人罷通る(1947)
【184】狙われた男(1956)
【183】愛と希望の街(1959)
【182】泉へのみち(1955)
【181】明日の夢があふれてる(1964)
【180】うわきのすすめ 女の裏窓(1960)
【179】三羽烏三代記(1959)
【178】恋とのれん(1961)
【177】霧の旗(1965)
【176】風の視線(1963)
【175】点と線(1958)
【174】警視庁物語 108号車(1959)
【173】有りがたうさん(1936)
【172】喜劇急行列車(1967)
【171】カミカゼ野郎 真昼の決斗(1966)
【170】彼岸花(1958)
【169】日本のいちばん長い日(1967)
【168】風の中の子供(1937)
【167】太陽を抱く女(1964)
【166】七人の刑事 女を探がせ(1963)
【165】月給¥13,000._(1958)
【164】○秘 ハネムーン 暴行列車(1977)
【163】学校(1993)
【162】朝を呼ぶ口笛(1959)
【161】猫と庄造と二人のをんな(1956)
【160】暁の翼(1960)
【159】どろ犬(1964)
【158】幌馬車は行く(1960)
【157】ワニと鸚鵡とおっとせい(1977)
【156】虹をわたって(1972)
【155】当りや大将(1962)
【154】暖春(1965)
【153】軍国酒場(1958)
【152】独立愚連隊(1959)
【151】音楽喜劇 ほろよひ人生(1933)

→【101〜150】即席映画狂第2部
→【01〜100】即席映画狂第1部



【200】香江花月夜 HONG KONG NOCTURNE(1967邵氏兄弟・香港)監督;井上梅次
  →
【201】 ▼【199】

何莉莉 Lily Ho……「ツイツイ」(字幕)長女「賈翠翠」<水谷良重
鄭佩佩 Cheng Pei-Pei……「ジエンジエン」次女 ※発音はジュエンジュエンの方が近い(賈娟娟)<倍賞千恵子
秦萍 Chin Ping………「ティンティン」三女「賈婷婷」<鰐淵晴子
蔣光超……老手品師、三姉妹の父「賈似眞」<有島一郎
陳厚 Peter Chen Ho………(砂塚秀夫似)「チェン」、作曲家 長女を慕っていたが、次女と結婚 <吉田輝雄
凌雲 Ling Yun………(佐原健二似)「ファン」、トランぺッター、台北で長女と心を通わせる <佐田啓二
田豊………(浜村純似)バレエの先生、三女を猛特訓、プリマに育てる <根上淳

「踊りたい夜」(1963)を監督自身が、香港のショウ・ブラザーズでリメイク。
設定に若干の手が加えられ、オリジナルには無い、三女を慕う若いダンサーの役が
登場したり、次女は飛行機事故で亡くなる夫の子を身ごもっていたりするが、大筋
は同じ。まったく同じ演出のシーンもあって嬉しい。楽曲は、広瀬健次郎に代わっ
て服部良一で、全体に原作より優雅か。「海を渡ってショウが――」というテーマ
曲くらいは踏襲してほしかった気もする。
 次女役のチェン・ペイペイは、倍賞千恵子のイメージを良く継承し、なお南果歩
を足した顔。
 ラストのステージシーンに、ピンクタイツをオマージュした衣裳あり。

 →▲【201】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【199】赤ちゃん特急(1956日活)監督;西河克巳

  ▲
【200】 ▼【198】

♪ちょっとすましてアクセル踏めば
 にっこり踊るマスコット
 あの子のくれたプレゼント乗せて
 富士のお山にオネストジョン
 オーライ、フーライ、カキフライ
 なんでもオーライ、みなオーライ
 なんでもかんでもみなオーライ
 おいら二人は愉快な仲間
 切っても切れない名コンビ
 おーいらふーたりはゆーかいな仲間

 大坂志郎柳谷寛のトラック運転手コンビ、東京・大阪往復の定期便。国道1号
線といっても、峠道は未舗装の悪路を行く。荷台に捨て子を見つけて、悲喜こもご
ものロードムービー。約1時間のSP作品なのでスターは出ないが、エピソードも
ふんだんに、手堅くまとまった佳作。高友子の笑顔がまぶしい。
 かなり大きな営業所を持つ「東西運輸」、中でも花形は、一昼夜かけて東阪直行
の定期便。ライバル「大洋運輸」と熾烈なスピード競争。自他共に認める色男ダイ
ちゃん・大坂志郎、気のいい相棒ロクさん・柳谷寛。

 日活マークに続いて、オープニングは主題歌に乗って、運転席視点で国道を進む。
有料道路の料金所で停まると「監督 西河克巳」。その先にロケ隊のステーション
ワゴンが停まっていて、監督とおぼしき人物が地図を広げている。その地図がアッ
プになって「東京大阪間は551キロ……」と佐野淺夫のナレーションで物語が始ま
るという洒落た導入部。ステーションワゴンはウッディな外装、他の映画でも見た
気がするが、画面に目をこらすと「日活撮影所」と書いてある御愛嬌。
 さてその日、東京の営業所。出発前に志郎は、社長令嬢・高友子から「渡したい
ものがあるから六郷橋で待っている」と意味あり気な電話を受ける。やにさがって
いる大阪に、高が渡したのは、高のカレシの大阪営業所長・相原巨典に宛てたクリ
スマスプレゼントだった。
 六郷橋から、高の車(車種不明のミニカー)に便乗した志郎、当時の有料道路
「戸塚道路」分岐(不動坂)で再び運転台に戻る。当時は国道だった、駅伝で御馴
染の遊行寺坂の切通し、ここで荷台に捨て子を発見。赤ン坊が大嫌いな志郎、大好
きな柳谷。赤ン坊には、手紙がついていて、大阪市トシマ区ウスヤマチ、アサヒア
パートのマツモトサダイチに届けて欲しいと書かれている。荷札がついてりゃ届け
にゃなるまい、と珍道中の始まりである。
 トシマ区、というのは都島(みやこじま)区の誤読だと思われるが、さらに臼屋
町のあるのは、都島区ではなくて、隣の北区である。現在は天満1丁目の一部。
〈つづく〉

「あの赤ン坊は俺とおんなじだ。俺も一人ぼっちで育ったんだ。ただ、オマエたち
みたいないいヤツと出会わなかっただけさ……。止めてくれ。」

 ▲【200】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【198】私は東京を歩く Я шагаю по Токио(1963大映東京)監督;増村保造

  ▲
【199】 ▼【197】

 オリンピックを前に、そこここで工事中の大東京、が影の主役の「街映画」。地
下鉄工事の徹夜勤務から帰る川口浩は、北海道の奥地から羽田に着いたばかりの
船越英二と、ラッシュアワーの地下鉄車内で知り合う。川口の親友で、結婚を控え
て徴兵の猶予を申請する川崎敬三、船越が見染めたレコード屋の店員・若尾文子。
この4人が、東京を舞台に過ごす一日を、テンポよく描く。

川口浩…………地下鉄工事労働者
船越英二………作家の卵、北海道の奥地、十勝三股から東京へ
川崎敬三………結婚式と自衛隊入隊を控えた、川口の親友
若尾文子………百貨店のレコード売場の店員
高松英郎………川口の従兄弟
瀧花久子………川口の祖母
吉野妙子………空港で踊る娘
潮万太郎………地下鉄車内の親爺
村田扶実子……犬を連れた婦人
花布辰男………教会の司祭
早川雄三………若尾の父親
三角八郎………英語を勉強する、カフェのアンちゃん
飛田喜佐雄……タクシー運転手
オスマン・ユセフ…タクシーの外国人客
村上不二夫……道路工事の現場監督
春本富士夫……妄想狂の男
大川修…………泥棒
夏木章…………警部
伊東光一………作家
見明凡太郎……作家の家の掃除夫
杉田康…………自衛隊の士官
岸田今日子……クイズゲームの司会者
宮川和子………クイズゲームの参加者
町田博子………遊園地のアイスクリーム売り
高村栄一、大山健二、小山内淳……若尾の父・早川の友人
田中三津子……川崎の婚約者

――というのは嘘、本当は「私はモスクワを歩く Я шагаю по Москве」
というタイトル、ゲオルギー・ダネリヤ監督のソビエト映画(1963年)。
 主演のニキータ・ミハルコフは、ジャックレモンをもう少し美男にした感じの青
年だが、観ているうちに段々、川口浩が、筆者にはオーバーラップしてくるのであっ
た。ヒロインのガリーナ・ポリスキーフ、容姿のイメージは、叶順子とか、東宝の
団令子、でもここは若尾文子をキャスティングしておきましょう、あてキャストは
それぞれ5年くらい前の設定で。同時期の日本映画を観ているような錯覚に陥る佳
作、蟹氏推薦。

 ▲【199】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【197】高校生芸者(1968大映東京)監督;弓削太郎  ▲【198】 ▼【196】

 大映末期の、南美川洋子を筆頭とする五人娘の、ライトお色気コメディシリーズ。
タイトルからしてキワモノ印だし、荒唐無稽なストーリーなのだが、なぜか1本ス
ジの通った感じのする不思議な作品、脚本は高橋二三。本作主演は、五人娘きって
のモデル体型、クールな美人・水木正子!というのがまず嬉しい。水木特有の少し
固い演技が、本作にはちょうどハマっている。南美川は、エピローグに登場するの
み。
 東京から2時間、空襲に遭わなかった地方都市の、旧態依然とした色街が舞台。
定時制高校に通う貧しい秀才・水木が芸者志願。但し、あえて芸は身につけず、と
いって体も売らず、勉学も怠らない。妨害に負けず、同級生3人、渥美マリ八代
順子
津山由起子も引き入れて、己の才覚で売れっ子になる。いたって真面目な物
語、その鍵となるのが「ワカメ酒」……。
 はじめは素人芸者の台頭に業を煮やしていた、少々トウの立った元売れっ子芸者・
長谷川待子。自称・柳橋出身というプライドもあって意地悪だったが、やがて水木
達に感心して擁護するようになる。お人好しで気風の良い待子姐さん、彼女の存在
がとても佳い。水木達の活躍にくさる朋輩芸者に、おなじみ田中三津子。加えて、
甲斐弘子と米山ゆかり。

 ▲【198】  ▲▲ページ冒頭▲▲


【196】星の瞳を持つ男(1962日活)監督;西河克己  ▲【197】 ▼【195】



 宵闇の荒川放水路土手。
 主人公、高橋英樹が、服役を終えて家路に着いている。画面一杯に文字が重なる。
「深川は 海より低い 土地である」
 そしてタイトル。公募した同名の主題曲、「星の瞳を持つ男」が流れる……。

――という日活アクションらしいオープニングから、まさか、あの様なエンディン
グに完結するとは……。
 ずらりとクレジットされた挿入歌のリストに、確かに「兄弟仔豚 歌 高橋英樹
山内賢
」という文字列を見留めて、「おや?」と、いぶかしんだのを、エンドマー
クで呆然とした後に思い出した。

♪ぼくらは仔豚の兄弟だ、いつでも仲良く、ビビデババデブー

 ▲【197】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【195】一心太助 天下の一大事(1958東映京都)監督;沢島忠  ▲【196】 ▼【194】

月形彦左衛門(嬉しそうに)馬鹿につける薬はございません。」

 楽しい江戸ッ子、錦チャン。将軍家光と二役。
 月形龍之介山形勲は善玉、進藤英太郎は悪玉。
 錦之助と中原ひとみの仲に、割り込もうとするのが丘さとみ

 オープニングは、ごったがえす朝の日本橋魚河岸風景。威勢のいいアンチャンた
ちがひしめく中にふらふら紛れ込んできたのは、恋人をとられて絶望の極にいる
“幸吉”田中春男。見かねた“一心太助”中村錦之助、面倒を見ることにする。春
男のイイナズケ“おとよ”桜町弘子は、“川勝丹波守”進藤英太郎の屋敷に奉公し
ている。年季が明けたら桜町は春男の嫁になるはずが、進藤の側女にされてしまう
というのだ。
「天下の御意見番」「駿河台の殿様」“大久保彦左衛門”月形龍之介の隣に屋敷を
構える進藤は、老中たちを買収し、材木問屋相模屋と結託して江戸城普請の材木を
横流し。あまつさえ、月形邸との間にある、月形所有の空地をも狙う強欲ジジィな
のであった……。

 で、すったもんだ、魚河岸v.s.木場の神輿対決などもサービス、智恵伊豆・山形
の働きもあってワル者は敗れて一件落着、さすがは沢島演出の娯楽時代劇だ。
 ラストシーン、将軍謁見、互いに見かわす錦之助と錦之助。

家光錦之助「馬鹿につける薬をとらすぞ。(三ッ葉葵の印籠を手渡す)
      太助、いつまでも馬鹿でおれよ……。」


 ▲【196】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【194】大巨獣ガッパ(1967日活)監督;野口晴康  ▲【195】 ▼【193】

 実に日活らしい怪獣映画。「母もの」として名高い本作、筋が粗いのが難である。
もっと練る余地があった気がしてもったいない。井上梅次が日活で怪獣映画を撮っ
たら、どんな作品ができただろう。東映なら沢島忠で。
 書割の富士山に、「銭湯か!」と本稿筆者は心の中で叫んだカットがあったが、
全体に特撮シーンは手間がかかっている。飛来する戦闘機を、ガッパが、これでも
かという程に破壊するのはなかなか豪華。南洋の孤島での巨神像破壊シーンのリア
リティや、怪獣映画の眼目たる市街蹂躙の舞台が熱海、というのも意外に良い。ゆ
るい気分から一転、温泉街を浴衣姿のまま逃げ惑うというのは、想像すると、不思
議な怖さを覚えるではないか。

 雑誌プレイメイト社は、5周年記念事業として「南海の楽園プレイメイトランド」
を計画。その呼び物になる猛獣や出演者を探しに船出する、川地民夫山本陽子
小高雄二和田浩治、大谷木洋子、という日活野郎Bチーム。それにコメディリリー
フとして乗船する桂小かん、川地と山本がいいムードのところをお邪魔したりのい
い仕事。
「オベリスク島」上陸、原住民に取り囲まれた小かん、「人喰い人種だ!」と震え
あがるが、歓待される。長老・加原武門、「チュータイチョーハダレカ?」。ここ
では戦時中の日本軍に感謝している様子だ。少々ムシのいい設定だがまあよろしい。
しかし、島民たちが止めるのもきかずに、孵化したガッパの子を持ち帰って災いを
招く、これは怪獣映画のセオリーである。

 ラストシーン、無傷の東京点描に続いて、朝焼けの羽田空港を仲良く飛び去る三
羽のガッパ。そんな折、社を辞めると切出す山本陽子。小高雄二は恋敵の川地民夫
に「追わなくていいのか」と、陽子を譲るのだ。心憎いラストだが、作品のテーマ
「家族愛」に沿えば、山本陽子は、男ヤモメで娘を育てる雪丘恵介のヨメになるは
ずなのだが……。

 ▲【195】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【193】東京マダムと大阪夫人(1953松竹大船)監督;川島雄三  ▲【194】 ▼【192】

  →キャストなど

 東京郊外、平屋の社宅が立ち並ぶ、通称「あひるヶ丘」。その名の由来通り、
ガァガァやかましいカミさん連中が、見栄を張り、腹を探り合うが、「日本一紡績」
の本社サラリーマンのダンナさん達を叱咤、尻に敷くのは一致している。
 とりわけ、お隣同士でなにかと張り合うのは、東京と大阪の、ともに老舗の商家
出身の月丘夢路水原眞知子。ダンナが三橋達也大坂志郎。そこへふらりと現れ
た水原の弟・高橋貞二と、縁談が嫌で逃げてきた月丘の妹・芦川いづみが、恋に落
ちる。引込み思案な芦川とは対照的な北原三枝が、そうとは知らずに貞二にアタッ
ク。北原は専務の娘だから、水原は夫・大坂の出世のためにも北原に肩入れ。
 主人公は月丘と水原、ヒロインは問答無用・演技無用の無垢な花・芦川。しかし、
いちばんカッコよく印象を残すのは健気な北原。その突っ張ったいじらしさに惚れ
惚れする。唯一残念なのは、北原三枝、スマートすぎて和服が似合わなかった。
 日活製作再開前、松竹に残った連中がゲストに見える、手堅く楽しいホームコメ
ディ。

 ▲【194】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【192】ニコヨン物語(1956日活)監督;井上梅次  ▲【193】 ▼【191】

  →キャストなど

 1949年に始まった東京都の失業対策事業、当時の日給が240円。
 そこから日雇い労働者の通称が「ニコヨン」。彼らの宿がドヤと呼ばれる簡易宿泊
所。映画では実際の地名は出てこないが、舞台は山谷のドヤ街。現存する玉姫職安、
今の台東区清川2丁目。7年たって日給は335円に上がったが、そこから失業保険
2円と健康保険6円を引かれて手取りは327円。ドヤは1泊60円。
 永井柳太郎が営むのは、単身者用のベッドハウス「希望館」と、夫婦ものが住む個
室の「昭和館」。
「ニコヨン殺すに刃物はいらぬ、雨の三日も降ればいい。」
 ベッドハウスの無聊を慰めるのは、ギターの音色。男(三浜元)が爪弾く♪ビュー
ティフルドリーマー。それぞれ事情を抱えて落ちてきた人々は、いつか抜け出すこと
を夢見て、今夜も明日の天気を心配する。

 ▲【193】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【191】花札渡世(1967東映京都)監督;成沢昌茂 ▲【192】 ▼【190】

「リュウちゃん、寿司ってのはなあオイ、つけて食うんだ。」
 伴淳三郎にイカサマのトリックを明かされて梅宮辰夫、憮然としながらも、結局
笑いあう。渡辺岳夫節のトランペット(「巨人の星」の前年の作品である)盛り上
がって、次の場面への繋がりの見事さに本稿筆者は恍惚とする。

 どこを切っても名場面、名セリフ。美しくスキの無い画面。火花を散らす巧みな演
技。
 はぐれものの集まりであるヤクザ社会は、他に行き場がないからこそ親分子分の結
びつきはカタギの比ではない。そう考える梅宮辰夫は、親分の理不尽にも、そのアネ
さん(2号だが)のネコババにもじっと耐える。東映において鶴田、高倉をしのぐ美
男子ヤクザ。
 ヒロイン鰐淵晴子は、古巣・松竹では使いこなせなかった美貌をそぎ落としてなお、
鰐淵史上最も美しい。
「初めてなの、カタギの人にと思ってたのに……。」

鰐淵「彫り物をしてると、蚊やノミに食われないんですってね。」
梅宮「そのかわり、冬は冷えるぜ。」
 やくざには、春も夏もない、あるのは冬だけだという。せっかく咲かした花も枯ら
してしまう。しかし、5年後の再会で梅宮は、服役中に他人の妻になってしまったウ
メコ・鰐淵のために、咲いた梅を散らさぬように、命を張る。
 本作中、一番の悪魔が小林千登勢、その餌食になる城野ゆき。あまりに哀しい役回り
だが、悲劇の前に、とびきり魅力的な姿をフィルムに残す。

 さて、カスガイ親分・遠藤辰雄と、アキバ刑事・西村晃が、暑い夏の日、世間話で
飛行船に触れている。「ツェッペリン伯号」が霞ヶ浦に飛来したのは1929年(昭和4
年)の8月だから、発端はその前年の秋。ラストは11月4日、明治節の翌日、1935年
となるか。
 舞台は四ッ谷。杉大門(すぎだいもん)とえば、花柳界の面影を今に残す荒木町界
隈。「とんだ芝浜だよ。」と梅宮辰夫のカネをネコババする沢村貞子、遠藤の妾、元
芸者。「津の守」を「つのもり」と発音しているのが残念。「つのかみ」が正しい。
 9のカブ、遠藤は古風なのか、「カウ」と発音する。

「天狗の爪(矢の根石)」、蠅取りデー、「まあ、こんなにたんと」

 ▲【192】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【190】東京犯罪地図(1956大映東京)監督;村山光男 ▲【191】 ▼【189】

[メモ]
「四谷警察署」(左門町、前を都電7系統走る)
「関東大学」(外観は東大白金台校舎)
築地本願寺
高田馬場近くの神田川? 高堂國典の宿舟と菅原謙二が襲われる川べり
落合斎場?
銀座金春通りの麻雀荘(コンパル向かい)伊東光一のアジト
東京駅八重洲口の貸ロッカー
志村喬・平井岐代子の家は小田急沿線(世田谷代田と下北沢の間の鎌倉通踏切)
新宿・淀橋浄水場 「800万都民」(志村喬のセリフに)
四谷・朝日橋近く(志村喬と苅田とよみ) ※迎賓館下の中央線トンネル
四谷・イグナチオ教会の塔を見上げる電話ボックス(中條靜夫逮捕)
春海橋(高松英郎が菅原謙二を救う木橋・背後に小野田セメント) ※鉄道鉄橋は翌年
豊洲・東京電力新東京火力発電所(菅原謙二と守田学の格闘) ※1956年運転開始
黎明橋(飛行場へ向かう警察車両が渡る)
「埋立地の飛行場」晴海・月島飛行場訂正23.1.19→東京航空・東雲飛行場
両国橋東詰「西内病院」(エピローグの屋上のロケ地、実際に病院かは不明)

少女・昌子役で松岡紀公子(きっこ)[劇団若草]
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【189】陸軍落語兵(1971大映東京)監督;弓削太郎 ▲【190】 ▼【188】

めいどのみやげ」という親娘コンビの漫才師がいる。父親の「ティーチャ」はな
んと87歳(2022年現在)現役。その本名・佐川真勝氏がなんと出演、3シーン。
「ヘンジョウカ」とは編上靴、つまり軍装のブーツのこと。

高島忠夫………「秋山千代吉」二等兵、落語家前座、事故で右中指欠損
桂南笑(→南喬)…「馬場和之助」二等兵、落語家前座、事故で足首故障
三夏伸…………「椎名勇」二等兵、落語家前座、事故で「欠け竿」
菅野忠彦(→菜保之)…「田中正造」二等兵、落語家前座、事故で「半金」
田武謙三………小隊長・ワダ少尉、ツバキ連発
仲村隆…………班長・カワシマ軍曹、高島たち4人組の内務班長、早川の酒を盗む
中原健…………ミネオ上等兵、仲村の補佐役、靴を盗まれる、高島と将棋
夏木章…………准尉、中隊長・早川雄三の補佐
早川雄三………中隊長・中尉

松坂慶子………モチヅキ看護婦
若水ヤエ子……婦長。「捧げ銃(つつ)しましたか!」
春風亭柳昇……軍医、粋な軍医、看護婦とイチャイチャ ※原作者

春風亭柳橋(六世)…落語家、師匠リュウキョウ
春風亭柳好(四世)…落語家、兄弟子リュウコウ

杉森麟…………部隊長大佐
三遊亭小円馬…部隊副官大尉
中田勉…………炊事班長軍曹
津田駿…………衛兵司令軍曹、近眼のメガネ
喜多大八………入営検査の軍医
河島尚真………衛生兵上等兵
井上大吾………軍曹、酒をふるまって、仲村と落語を聞く班長連中
佐川真勝………伍長、酒をふるまって、仲村と落語を聞く班長連中、まゆげの太い男
       「しかし、別につらい使役じゃないから安心しろ。」

大泉滉…………役場の兵事係
笠原玲子………居酒屋の女将
有島圭子………女中頭おサト(料亭田中屋)
望月節子………女中おキヌ(料亭田中屋)
高橋由美子……女中ミエコ(料亭田中屋)
九段吾郎………オカマの調理人(料亭田中屋)
中村よし子……(おそらく慰安婦)
山名佐知江……(おそらく慰安婦)

  ▲【189】 ▲▲ページ冒頭▲▲

【188】刑事物語 犯行七分前(1961日活)監督;小杉勇,,

    ▲
【189】 ▼【187】

 草津恋しやヨーホホイ あの湯煙にヨ(草津湯もみ唄) 。

 小杉監督のSP(抱合せ中編)シリーズ、手堅く量産のゴホウビか、草津温泉ロ
ケツアー。協賛;草津温泉観光協会。郵便車が悪漢によって奪われる。
 ヒロインの香月美奈子は、老舗「一井旅館」の女中。親子デカ、益田喜頓青山
恭二
が投宿。もう一つ、「金(かね)みどり旅館」というのが、温泉に着いたバス
の出迎えに番頭が旗を掲げてやってくる。冒頭の、宮崎準近江大介が郵便車を待
伏せるシーンでは観光パンフの地図を見ているのだが、そのパンフレットにはやは
り「金みどり旅館」の名入り。わし(当稿筆者)の勘によると、ロケ隊が陣取って
いたのが金みどりか。両旅館とも2022年現在も営業中。
 さて物語の主人公は、郵便局の臨時雇い運転手・深江章喜。犯人役、悪人役とし
て、今シリーズも活躍してきたが、今回は襲撃される側。シリーズの観客連中も、
たまには善人役で良かったなァ、とスクリーンを見守ってきたが、南風夕子のバー
の2階にたむろする犯人たち――宮崎、近江、それに上野山功一が加わって、強奪
した現金書留の分配シーン――の前に深江登場。ああ、やっぱりか、と椅子から観
客一同ずり落ちる。
 さて、深江同様、このシリーズでかっこ良さを発揮する上野山功一。よく検証す
ると、部屋内のシーンにしか登場していない。死体として西の河原で発見されるシー
ンは顔が映らなかったように思う。おそらく、草津温泉には連れて行ったもらえな
かったのだろう。そのかわり、次回第9作では、心置きなく二枚目を張る。
 隠されたミステリー、というよりほじくり出したミスを一つ。郵便車襲撃は10月
10日。これは、郵便局から香月に差出された、書留紛失の詫び状に「10月10日
殺生河原で」と犯行日が記されている。喜頓が香月から受取る手紙、書留紛失の後
に出された手紙の日付も10日。ところが、その事件の後に深江が出し直したはずの
現金書留の消印、よく見ると8日の消印が押してある。ということは、深江は郵便車
襲撃を知っていただけでなく、香月の書留差出しも、事前にお見通しだったという
ことになる……。
 それにしても、不良時代に香月が喜頓に立て替えてもらった無銭飲食の代金が
5000円。ラーメン1杯50円くらいの頃かな、19歳のズベ公、いったいどんな豪遊
をしたのか。
  ▲【189】 ▲▲ページ冒頭▲▲

【187】刑事物語 ジヤズは狂っちゃいねえ(1961日活)監督;小杉勇,,

    ▲
【188】 ▼【186】

 シリーズ中でも硬質な画面作り、タイトルが奮って「ジャズは狂っちゃいねえ」
である。9作目にして、ついに上野山功一が主演の刑事親子に次ぐ役につく。ヴァ
ンプ役は定番、楠侑子。そして、本職はドラマーの白木秀雄の演技が印象に残る。
 横に伸びてしまったスタンダード用のNKレリーフマークに続いて、雪降る渋谷
の街。ジャズ喫茶でドラムスを叩く白木秀雄のアップ、そこにタイトル。ステージ
には他にトランペット・上野山功一、テナーサックス・伊藤孝雄、加えて実際のジャ
ズメン、あごひげのピアノ・世良譲、ベース・栗田八郎。クレジットの白木秀雄ク
インテットには、もう2人、松本英彦小俣尚也の名前があるので、上野山のトラ
ンペットは小俣の、伊藤のサックスは松本の吹替えであろう。
「監督 小杉勇,,」と出て、楽屋に戻るバンドメン。上野山と白木以外、麻薬を注
射している。打たない2人は、バャリースを飲む。
 白木と上野山は、ヤク中のサックス、ベース、ピアノを外して、新たに6人編成
のコンボを組む。ようやく画面に登場する松本英彦と小俣尚也。小俣はアルトサッ
クスを吹いていて、小俣本人かは未検証だが、おそらくそうだろう。問題は後ろで
目立たないように演奏しているピアニストとベーシスト。よくよく見ると、ヒゲを
とってメガネをかけた世良とヒゲつけてメガネをかけた栗田である!

「嵐を呼ぶ男」(1957)で裕次郎のドラムの吹替えをしている白木は当時のトッ
プドラマー。本作では役名も「シラキ」として、演奏以外に芝居も手堅くこなして
いる。クライマックスのナイトクラブでの捕り物シーン、「おいみんな、やめるな!」
とステージで独り、ドラム演奏を続ける。
 麻薬中毒のジャズメンを苦々しく見ながらストイックに演奏に打ち込む役を演じ
た白木、私生活では睡眠薬におぼれて死んでいったというのは皮肉なエピソード。
 デカ長・青山恭二は、ヤク中の伊藤孝雄と学生時代にバンドを組んだ仲、とトロ
ンボーンを抱えて内偵をする。捜査のためならヤクも打つ。
 登場する貨物駅はおなじみ隅田川駅、クライマックス前の山場。善悪二刀流の
宮崎準と弘松三郎、今回は刑事役。宮崎は本庁、弘松は所轄。
  ▲【188】 ▲▲ページ冒頭▲▲

【186】刑事物語 殺人者(ころし)を挙(あ)げろ(1960日活)監督;小杉勇,,
  ▲
【187】 ▼【185】

「ずいぶん待ったんだよアタイ!」
「あァ?なに言ってんだか聞こえねえよ!」
「もう離れないよ!好き!」
右に曲がりながら走り出したダンプカー、一直線に駆け寄って運転席のドアに取付
く筑波久子。ドアを開けて乗せる深江章喜。ハンドルを握る深江にすがりつく筑波。
狭い運転席のアップ、そこで上のセリフである。場所は水道橋駅西側。※22.10.1訂正
 小杉監督、ふだん引き立て役に甘んじている脇役俳優に見せ場を作るのがとても
巧い。日活おなじみの悪役ダンディ、深江章喜。だいたい二本柳寛か金子信雄の手
下で、ちょっと情けなく死んでゆくのだが、本作では思う存分二枚目を演じる。
 クライマックスは下水道のトンネル。設定は、築地・明石町あたり。主演の青山
恭二と撃ち合いながら深江は逃げる。下水道の出口、海に注ぐ開口部には柵がして
あった。深江、万事休す。青山が手錠をかけ、勢いあまって殴ろうとするのを、父
である老刑事・益田喜頓が止める。
「ヤスオ!」
 吾に返った青山は自分のYシャツを引きちぎって、深江の傷を介抱する。柵の向
こうに夜の海。ここまでセット撮影。画面は昼の同地点の映像がオーバーラップ。
夜のシーンの鉄柵にはない、ゴミが昼のカットには無数にこびりついている。

 本作、楽しいオマケは、参考人として喜頓が呼び出す、若水ヤエ子と榎木兵衛。
二人ともスネに傷を持つ、喜頓の長い御馴染さんだ。拳銃の売人から足を洗ってバー
のマダムになったヤエ子。ズーズー弁は相変わらずだが、艶に煙草をくゆらせなが
ら喜頓の質問に答える。このシーンの紫煙が、画面にとても美しい。一方、焼芋を
ほお張りながら、嬉しそうに喜頓と話す榎木。別件で留置中の榎木は、面会に来た
喜頓の差入れの焼芋の皮をはがすのももどかしく、むさぼるように食べている。そ
のお行儀の悪い姿がほほえましい。

 たいしたことではないのだが、青山が聞込みに訪れるバー「ドモンジョ」。かの
ドロンジョ様の名の基でもある女優の名をつけた店。そのマダム、弓月真理という
女優だそうだが、つるんとした顔、まあるい目、針すなお似顔絵のような造作が妙
に目につく。

 さて、本作品の被害者・隅田恵子が入院する「セイカ病院」。本願寺の近くとセ
リフにあるので、いかにも築地の聖路加のもじりだが、外観のロケは写りこむ文字
の通り「東京厚生年金病院」、飯田橋、津久戸町。ラストシーンの病院の屋上、
喜頓が入院しているのは、やはり飯田橋の警察病院(稲垣美穂子の勤務先のもここ
だろう)の設定かと思うが、ロケ地は御茶ノ水の医科歯科大付属。見下ろす神田川
と国電中央線をまたぐ御茶ノ水橋に都電の軌道跡。2021年、橋の改修工事で露出、
撤去された線路が写っている。
  ▲【187】 ▲▲ページ冒頭▲▲

【185】素浪人罷通る(1947大映京都)監督;伊藤大輔  ▲【186】 ▼【184】

「あいさ。」

「お前さん、死相が出てるヨ。」

「と、大きく出てはみたものの、1本の扇子にも表と裏……。」

 田舎道の傍らにひざまづいて、吉宗鷹狩の馬列を凝視する天一坊・片山明彦
吉宗・守田勘弥(十四世)、無言で陣笠に右手を軽くつかんで目礼。

「会うた者にきけ!
 天一坊の実の親だ!
 八代将軍吉宗にきけ!」


 阪東妻三郎、伊藤大輔タッグで渾身の名作。絞り出すような阪妻のセリフまわし
にシビれる。

「曾子曰ハク(そうしいわく)、人ノ爲二謀リテ忠ナラザルカ……、ひとのために
はかりてちゅうならざるか……。」
 三省堂書店の店名の由来となった論語の一文。藤沢宿で手習いの師匠をしていた
山内伊賀亮(やまのうちいがのすけ)・阪妻、この一文を唱えながら、静かに徳川
御落胤「天一坊」の江戸入り同行を決意する。決死の覚悟を察知する妻お春・平井
岐代子
、手にした釣瓶桶が井戸の底に落ちる。あえて書いておくと、阪妻伊賀亮、
きちんと、孔子の言葉は「曰ハク」を「のたまわく」と読んでいる。

「式部!手柄に取れェ……。」

  ▲【186】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【184】狙われた男(1956日活)監督;中平康  ▲【185】 ▼【183】

 銀座裏で殺人事件が起こる。真犯人は誰か、途中で類推できる演出になっている
ので、真実にどうたどりつくのか、あるいはもうひとひねりあるのかが観客の興味
である。ミステリー趣味より、前科者というだけで犯人と決めつける小市民たちと、
疑われる人間の苦しみに主題がおかれている。
 捜査主任が、ロングコートにソフト帽の、いかにも本庁の警部、内藤武敏
 ふてぶてしく怪しい市村俊幸

 さて、冒頭タイトル、大東京の俯瞰、ぐるっと回ってお濠端。まだ東京タワーは
無い代わりに、TBSやNHKのテレビ塔がそびえ立つ。カメラは移動しておなじ
み銀座の時計台。そこから、三愛裏、西銀座の鈴らん通りを舞台に提示する。次の
シーンから、非常によくできたセットの銀座の裏町が映し出されるが、なぜかセッ
トは木挽町(こびきちょう)方面、つまり東銀座である。具体的には、殺害された
美容室のマダムが店の向いに借りている部屋が「東銀座アパート」。まだ満々と水
をたたえた築地川が登場する。一方、舞台の「小路」の裏という設定で登場する死
体のあがる場所は西銀座の築地川くさいし、新聞記事にも「銀座八丁目西の掘割」
とある。うむむ、混乱してきた。
 クライマックスの「天寿堂ビル」屋上。向いに折込広告社、ちょっと離れてビフ
テキのスエヒロを望む位置関係から考えると、銀座6丁目東、三原通りの西側、現
在の銀座6丁目12番がロケ地と推定する。
 というわけで、冒頭で西銀座を示唆するしているけれど、東銀座の可能性もある
界隈、松坂屋東西の、とある路地、小さな商店の密集する一角で話は進んでゆく。
――松坂屋も今や注釈を付けねばならなくなった、つまりGINZA SIXの裏あたり。
「小路」の入口の丁字路。4時半の位置に花屋(山田禅二)。隣に物語には登場し
ないコーヒーショップをはさんで洋裁店(潮けい子)、その二階に事件のあった美
容院(坂井美紀子・泉桂子)。狭い空き地に続いてバー「シャトウ」(南寿美子・
牧眞介・天路圭子
)。そして荒物屋(北林谷栄)。通りを隔てた花屋の向いに宝飾
品の天寿堂(井東柳晴)、天寿堂のビルには、大洋貿易(市村俊幸)。隣にバー
「エデン」(三鈴恵以子・近藤宏)、質屋(松下達夫)、神社新聞(浜村純)、大
阪寿司「だるま」(下条正巳)。
 路地の突当りのビルにはCINEMASCOPEのネオンが輝くので、映画館の裏だろう。
そして丁字路の1時半の位置、つまり花屋・美容室のもう一方の向いに鉄筋3階建
ての「東銀座アパート」。口さがない店主連中、噂話に尾ひれがついて、前科者の
牧真介が、すっかり犯人に仕立てられる。

 目を引くシーン、……の片隅は、祝橋の上で傷心の牧を慰める天路のシーン。下
流に万年橋と東京劇場。その上流、祝橋と万年橋の間、築地川の東側つまり築地寄
りには、大きな「かき舩」が浮かんでいる。
 牧が刑務所での知り合い、マンボのマサ・井出忠彦と酒を飲むの焼鳥の屋台は汐
留川沿い。奥に新橋が映り、川の向こうには巨大な居酒屋「新橋酒蔵」。

 物語は悲劇的な結末、に続いて鮮やかなエピローグ。「人殺し―!」、特別出演
が北林谷栄と殿山泰司。スターは出ないが、新藤兼人&中平康コンビのセンスが光
る。

  ▲【185】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【183】愛と希望の街(1959東宝)監督;大島渚  ▲【184】 ▼【182】

『私は少し悲しく、少し怒っています。』

 大島渚監督デビュー作、工場の町が舞台。貧しい少年と、彼をいたわろうとする
裕福な少女の物語、それに、少年の担任教師と少女の兄の報われない恋が描かれる。

「あなたとあたしの間にあいている大きな溝を、あなたは埋めることができる?」

 さて、物語の発端となり、その後も度々登場する川崎駅前。国鉄と、まだ地上を
走っていた京浜急行の踏切の間に、主人公の少年の母親・望月優子は靴磨きの店を
広げる。並んで座っているのが松竹の脇役女王、谷よしの、もう一人、後藤泰子。
 女手一つで子供二人を育てる望月が体を壊して、代わりに長男の中学3年生マサ
オ・藤川弘志が、伝書鳩を売ろうと歩道に座っている。通りがかった高校2年生キョ
ウコ・富永ユキが、療養中の弟の慰みにと鳩を買う。
 望月・藤川親子の暮らすバラック街。川崎駅から近い設定だろうが、実際にロケ
をしているのは鶴見線の安善駅付近。3基の平型タンクと、高圧線の門型鉄塔を載
せた、鉄道の架線柱が目印。藤川と、担任アキヤマ・千野赫子が通う学校は、潮田
中学寛政分校(現・寛政中学校)であろう。
 ブルジョア、富永とその兄ユウジ・渡辺文雄は、鶴見の街を見下ろす、東寺尾あ
たりの高台の邸宅に住む。
 藤川の妹ヤスエ・伊藤道子が遊ぶ空き地。米軍所有のタンク車(米タン)が脇を
走り、米軍払下げのディーゼル機関車DD12が憩うのは、おそらく安善駅裏。この
辺りの埋立てに尽力した、浅野総一郎翁の銅像が少女を見守る。
 藤川が受験する「光洋電機」、場所柄、東芝といいたいところだが、工場内の撮
影は、日立の工場内で行われている。


  ▲【184】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【182】泉へのみち(1955東宝)監督;筧正典  ▲【183】 ▼【181】

「クルリさん、ボク、キミに結婚してもらいたいと思うんだけど、
 どうだろう?」

 筧監督のデビュー作は、東京あちこちロケ映画、東宝大部屋俳優総動員。
 中でも中野俊子が、主演・有馬稲子の勤める編集部の、おそらく副編集長として、
空前の露出度とセリフ数。クレジット有。

一万慈鶴恵……佃渡船の客、有馬稲子とツーショットでアップに
河美智子………中東趣味のコーヒー専門店のウエイトレス
森啓子…………別の喫茶店のウエイトレス
堤泰久…………河美智子の喫茶店の客
勝本圭一郎……左卜全のおでん屋の客
北野八代子……女性の友の編集部員
記平佳枝………保健所の職員、根上と有馬を呼出す
その他大勢、確認中。

 そして河内桃子の妹を演じる池田昌子。子役だが、顔つきからして、後のオード
リーヘップバーン、あるいはメーテルの声の池田昌子だと思われる。

 稲子の「女性の友」社は、神田駿河台ニコライ堂の坂の下。屋上シーンでは、明
治大学の校舎や、遠く昌平橋の奥に上野松坂屋を望む。
 哀れな女工・河内桃子は佃島。都営渡船のシーンが何度も。佃島の船着き場の他
にも、船上ロケ。
 上野国立博物館、鎌倉鶴岡八幡宮近代美術館、日本橋「壺中居」、国立久里浜療
養所。
 稲子が成城の自宅に帰るため、夜の小田急新宿駅から電車に乗る。恋人(1951)
でも印象的な、改札前。ここで2シーン。しかも、かなり長い時間、改札前の様子
が映されている。町田は「新原町田」、登戸は「稲田登戸」だ。
 鉄道関連は他に、国電新宿駅ホーム、目白駅ホーム(なんと山手線の車内から)、
経堂駅ホーム、井の頭公園駅前の鉄道橋、水道橋駅東側の中央線を見下ろす坂道。
 小田急・成城学園前駅の出口階段のシーン。「OER 成城学園前駅」と駅名看板も
はっきり映し出される。ただし……、惜しいかな、聞えてくるタイフォン(警笛)
の音が、小田急ではなく、玉電の、あの気の抜けた音なのであった。

「カナザワさん……。」「?」「イーッ!」

  ▲【183】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【181】(あした)明日の夢があふれてる(1964松竹大船)監督;番匠義彰
  ▲
【182】 ▼【180】  キャストなど

主な舞台は浅草界隈、サテライトに群馬の桐生。
季節は秋。カレンダー9/10月、セーター、渡良瀬川土手のススキ。
天ぷら屋の軽トラックは愛知自動車コニー360。ガソリンスタンドのピックアップ
はプリンス自動車マイラー34系、ツリ目の4灯、ブルーの車体。勝呂の自家用車は、
ちょっと古くさい、黒のダットサン1000。
桐生に里帰りする月丘が乗るのは東武の急行、5700系青帯車。
高揚感あふれる東京モノレール走行シーン、羽田で飛び立つ日航DC-8。
松山が落語の稽古をする上野東照宮、動物園の懸垂式モノレールも登場。
主人公は三田明、主役は鰐淵晴子勝呂誉。シニアの三角関係が月丘夢路をめぐる
益田喜頓佐野周二。職人コンビに世志凡太なべおさみ
侠気あふれる三上真一郎、あどけない柏木由紀子、そして落語狂いの松山英太郎

  ▲【182】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【180】うわきのすすめ 女の裏窓(1960松竹大船)監督;番匠義彰
  ▲
【181】 ▼【179】

 ブルーフィルムの上映会場の旅館には「小まち」という看板、木造二階家からカ
メラが切り返すと、一直線になだらかな下り坂。坂の途中の左手に「旅館武蔵野」。
 旅館武蔵野は「恋とのれん」(1961番匠義彰)で、織田政雄の旅館「中西旅館」
の前の電柱広告に、「旅館武蔵野ココ」とあるので、織田の旅館前景のロケ場所と
推定している。場所は湯島の三組坂だ。番匠作品のロケ地の連係プレイ。「泣いて
笑った花嫁
」(1962番匠義彰)のアパートもこの辺りだと思うのだが。
「小まち」の脇の階段は2022年にも存在、現在のホテル江戸屋の向い側。「小まち」
の跡にはラブホテル。当時、ホテル江戸屋は開業していないが、今も残る石垣が画
面に映る。その下隣に建つのが「旅館武蔵野」である。

  ▲【181】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【179】三羽烏三代記(1959松竹大船)監督;番匠義彰
  ▲
【180】 ▼【178】  キャストなど

 どこを切ってもスターが出てくる「松竹映画三千本記念作品」。後から後から、
これでもかっ!と登場するスターのアップにくらくらする。それを手堅くまとめる
番匠伯楽。
 三羽烏三代で9組のカップル。いずれもそれぞれ忘れがたく、一つにしぼれとい
われても……、コージです!横恋慕で番外ですがコージです!
――何を言い出したのか解らないだろうから親切に説明すると、「ローマの休日」
をモチーフに、この壮大な人間模様をまとめた作品だ、ということである。ヘップ
バーンが桑野みゆき
 オープニングは大松竹が誇る浅草国際劇場、SKDのステージ。
「アトーミック、トゥウェンティセブン!」
 総勢27名のラインダンス、舞台上手、画面右手、3番目くらいに倍賞千恵子がチ
ラリと映る。その他大勢扱いなのでクレジットは無し。
 その後、浅草寺ロケがあって、主な舞台の一つになる老舗手焼せんべい屋「入河」
は、令和に這入って店じまいしてしまった浅草すしや通り「入山せんべい」を意識
していると思われる。
「根津御祭禮」と提灯の飾られた祭、でも神輿から盗まれた鳳凰の隠し場所が駒込
吉祥寺(文京区本駒込3丁目)だったり、エピローグの祭は白山上の通りを練って
いたり、全体に舞台設定は、浅草と、本郷(旧駒込エリア=千駄木・本駒込と根津
地区)を合わせたイメージの地域。当時でも古い東京の「とある」街ということに
なろう。

  ▲【180】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【178】恋とのれん(1961松竹大船)監督;番匠義彰  ▲【179】 ▼【177】

  キャストなど

  ▲【179】 ▲▲ページ冒頭▲▲



【177】霧の旗(1965松竹大船)監督;山田洋次  ▲【178】 ▼【176】

  キャストなど

  ▲【178】 ▲▲ページ冒頭▲▲



【176】風の視線(1963松竹大船)監督;川頭義郎  ▲【177】 ▼【175】

  キャストなど

  ▲【177】 ▲▲ページ冒頭▲▲



【175】点と線(1958東映東京)監督;小林恒夫  ▲【176】 ▼【174】

 松本清張の出世作、紀行サスペンスの傑作「点と線」。刑事ものとしては、同時
期に製作されていた東映東京の「警視庁物語シリーズ」とも共通する出演者が多数
あって、それがまた楽しい。
 主人公の南廣[新人]は警視庁捜査第二課のエリート警部補。警視庁物語にも翌
1959年に若手刑事として登場。
 序盤にタッグを組む叩き上げの田舎刑事に、本作から清張作品の常連になる加藤

 捜査二課長は堀雄二で、警視庁物語ではレギュラー部長刑事なので本作の方が格
上。ちなみに堀は「七人の刑事」では係長・捜査主任である。警視庁物語の係長・
捜査主任の神田隆は、情死のかたわれ、官僚・成瀬昌彦のイヤミな兄役で1シーン。
「体にさわっても知らんぞ。」ふてぶてしい悪役といえばこの人、山形勲がいかん
なく持ち味発揮。
 90分ではちょっと窮屈な情報量だが、テンポよく進んで、あっという間の結末。
 元祖「時刻表鉄」高峰三枝子。山形が愛人・奈良あけみと逃避行するという天竜
峡、飯田線を想像して「谷の合間を縫い閉じるように、ちっぽけな汽車が走ってい
るんだわ。小さな煙を吐いて……。」というけれど、惜しいことに飯田線は開通以
来、蒸気機関車は走らないのであった。まあ、これは仕方ない。病弱で旅とは縁遠
かった高峰の哀しさである。山形に見切りをつけていれば、行く行くは鉄道推理作
家になるだけの力があったのに……。
 本作で、ちょっとやそっとでは見破れないトリックが、事件発生の福岡市郊外の
香椎浜周辺の映像。九州ロケはできなかったが、登場する駅も駅前から広告から巧
妙に改装されて、現地感を出している。
 一つ解明されない謎が、国鉄香椎駅ホームに列車が進入するシーン。総武本線の
佐倉駅で撮影ということになっているのだが、先頭に映る蒸気機関車C58 57号機。
このカマは、当時、千葉にはいなかったようなのである。わざわざ他の遠方にでか
けるとも思えず、真相は迷宮入りだ。

  ▲【176】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【174】警視庁物語 108号車(1959東映東京)監督;村山新治・若林榮二郎
 ▲
【175】 ▼【173】

 →【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
 →【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
 →【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
 →【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
 →【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
 →【136】警視庁物語 十五才の女(1961)
 →【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
 →【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
 →【75】警視庁物語 行方不明(1964)

 東映東京撮影所の人気シリーズ、長谷川公之原作「警視庁物語」第10作。
 未明の麻布三河台町。現在のミッドタウン東縁、桧町公園の脇。パトロールカー
の巡査・相馬剛三、不審な小型トラックに職務質問をしたところ、拳銃で撃たれて
重症、後に死亡する。まだ防衛庁は移転してくる前で接収中なので、捜査本部の地
図には、事件現場の横は「米軍ハーデーバラックス」と書いてある(現在の赤坂プ
レスセンターとは別の場所)。
 捜査するのは警視庁捜査一課の主任警部・神田隆と、6名の刑事たち。
 堀雄二、花沢徳衛、須藤健、山本麟一、佐原廣二、南廣(弥生廟での整列順)。
 麻布署に置かれた「警察官殉職事件特別捜査本部」。捜査の途上、王子署、府中
の運転免許試験場、検察庁墨田庁舎内にある警視庁交通第一課分室も登場するが、
桜田門は交通総務課管理係室のみでデカ部屋のシーンは無し。そして、ラストシー
ンが、殉職警官らの眠る「弥生廟」。

 毎回、楽しみな凝ったオープニングタイトル。今回は、早朝に招集を受けて集め
られる刑事たちの様子。主任警部・神田隆の家にもまだ電話はないらしく、連絡を
受けた近所の交番の巡査が家の戸を叩く。
 作品中、犯人の捜査と平行して、殉職警官を巡るエピソードが描かれるところが
珍しい。

 捕物は2日目の夜7時、「有楽ビル」地下駐車場。実際には、なんと東映のライ
バル会社の牙城「日活国際会館」(日活ホテル)ロケなのであった。
 ゲストスター、東野英治郎、売り出し新人曽根晴美。ヒロイン不在で、地道な台
帳の検索など、地味ながら細かく佳くまとまった短編54分。
 キーとなる逃走車両、「4 す 1946」。トヨタSG型トラック1953年式。
 時は5月。事件発生、捜査初日から2日目夜までの物語、と翌朝のエピローグ。

松本克平………警視庁捜査一課長
神田隆…………(捜査一課x号室)主任警部。温厚なボス。表札が映るが読めない。
堀雄二…………部長刑事ナガタ。神田の机上メモには「長田」。声が裏返る。
花沢徳衛………ベテラン刑事ハヤシ。同、「林」。新聞を広げたまま眠る。
須藤健…………刑事ワタナベ。同、「渡辺」。ハンチング。
山本麟一………刑事カネコ。同、「金子」。ソフト帽のダンディ。
佐原廣二………刑事タカツ。同、「高津」。逃走車の交通違反を台帳から発見。
南廣……………刑事ヤマムラ。同、「山村」。犯人逮捕。

関山耕司………パトカー巡査部長キンバラ。108号乗務中に事件発生
相馬剛三………パトカー巡査「石川」。不審車両に職質し撃たれ殉職
滝謙太郎………府中試験場の事務官、二ッ星の巡査部長。
岡野耕作………王子署の刑事

東野英治郎……フジイガレージ社長 赤坂溜池の修理工場の社長、非常に実直。
清水一郎………カメラの故買屋カナヤマゴロウ
曽根晴美[新人]…共犯者「久我恵太」
高田博…………主犯「木谷三造(キタニサンゾウ)」
石島房太郎……サガミ電機社長。秋葉原の「富士電機」問屋 逃走車両の前所有者

杉義一…………「堀和彦」中古車屋の店員。犯人の偽名の同姓同名の人物の同僚
浜田寅彦………容疑者の住居の隣人、テレビ作家 江東区北砂町9丁目(現・東砂3丁目)
岡部正純………千住自動車教習所の係員
清村耕次………新聞記者「たのみますよ。」
梅津栄…………新聞記者、メガネ「ナンバー取れてるんだって?」
大木史朗………新聞記者、帽子「これ本部事件になっちゃうんすか?」

●犯行現場
港区麻布「三河台町27番地」……警官射殺現場(第二現場)、現・六本木4-3。
   ※設定とロケ場所同一。
現・六本木4-4……不審車両発見現場(第一現場)。
   ※道路の向いは現在の東京ミッドタウン。
●サガミ電機 石島房太郎
[秋葉原]現・千代田区外神田3丁目、中央通りの西側
●フジイガレージ 東野英治郎
[赤坂見附]現・港区赤坂3-4、日枝神社下
●運転免許試験場 滝謙太郎
[府中]
●警視庁交通第一課分室
検察庁墨田庁舎内
●警視庁交通総務部管理係
[桜田門]本庁舎内
●「木谷三造」の家 隣家に浜田寅彦
交通違反の調書、神田隆の机上メモによれば「江東区北砂町9-752」現・東砂3丁目?
   ※都営住宅のようだが、詳細不明
●千住自動車教習所 岡部正純
[堀切]足立区千住曙町
●日産中古車センター 杉義一
[西麻布・霞町?]バックの建物に「ハリウッド」(美容高等学校)の文字
   ※ずらりと並ぶ日産オースチンA50ケンブリッジ。初代ブルーバードは発売前。
●「有楽ビル」
[日比谷]現・千代田区有楽町1-8、当時の日活国際会館ロケ。
   ※後に日比谷パークビルヂング。建て替えてホテル、ザ・ペニンシュラ東京。
●弥生廟
北の丸公園内 現在は「弥生慰霊堂」

  ▲【175】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【173】有りがたうさん(1936 松竹蒲田)監督;清水宏  ▲【174】 ▼【172】

「アリガトー。」

 オンボロバスの運転手、上原謙。細い峠道、途中行き交う人々、よけてもらう度
に、彼はいちいち「ありがとう」と声をかけ、右手で敬礼する。時にはニワトリに
まで。
字幕「だから彼を 有りがたうさんと云ふ」
 伊豆下田から天城越え、峠道の人間模様。修善寺方の終点の様子は描かれないの
だが、20里というセリフから推定すると、三島が終点、というより起点か。
 途中、河津から小鍋峠のトンネルを抜け、湯ヶ野で下り便と行き会い、さらに断
崖をたどって天城トンネル。下って嵯峨沢橋(親柱の額が読める)。旅芝居の一座
の町まわりはもう修善寺であろうか。

若い娘「チコンキ(蓄音機)のタネイタ(レコード)買ってきてね。」
 乗客でもないのに、沿線の住民のお使いをきいてあげるのは、「こだまは呼んで
いる
」でも出てくるエピソード。「これも街道渡世の仁義」と上原。
 戦前、公開前年の昭和10年の秋。昨年に続く凶作の秋のこと。
 下田午後3時発の上リ便に乗り合わせるのは、東京に身売りする娘・築地まゆみ
とその母親・二葉かほる、数人の行商人、いけすかないヒゲの男・石山隆嗣、それ
に住み替えする酌婦らしきイイオンナ・桑野通子
 桑野は上原に惚れている。もちろん、どうにもならないことを知っている。
 ♪浮いたか瓢箪、軽そに流れる
  行く先ゃ知らねどあの身になりたや(越中おわら節)
 乗客も行き交う人々も、それぞれ容易ではない事情を背負って峠を越える。有り
がたうさん・上原は、彼らをどうしてやることもできないが、ねぎらいながらハン
ドルを握る。
 ゆったりとしたセリフ回しと降り注ぐ陽光で、監督・清水宏はやるせない運命を
じっと見守る。

桑野「シボレーのセコハンを買ったと思や、あの娘を一山いくらの女にしないです
   むんだよ。」

 どうでも良いが、運賃授受のシーンがない。また、車掌なしのワンマンカーであ
る。湯ヶ野のシーン、途中の河津で降りたはずのジイサンが、最後列に座っている。

  ▲【174】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【172】喜劇急行列車(1967 東映東京)監督;瀬川昌治  ▲【173】 ▼【171】

横須賀線で初めて会った貴方は素晴らしかった。
鎌倉から東京へ通学する貴方に毎日会えることが、
私には無上の楽しみだった。
私は貴方に密かに憧れていたのです。
マリコさん……。
野越え山越え海辺越え、走る列車の窓辺には、
思い起こせば……。

それから貴方は大学生になり、すくすくと成長していった。
まるで美しいバラの花のように。
♪バーラが咲いたバーラが咲いた
 真っ赤なバーラーがーとくらァー

そして4年の歳月が流れ、
私は湘南電車の専務車掌として……。

貴方に毎日会えないことが、私にはたまらない淋しさだった。
しかし、それは忘れもしない、昭和39年5月8日午後3時25分、

 (回想)渥美清「おそれいります、乗車券を。」
   佐久間良子「あら。」
 (佐久間の薬指にエンゲージリング、傍らの江原真二郎が切符を見せる。)

私はこんな哀しかったことはない。
ああ、なんと自分がみじめに見えたことだろう……。

関敬六「専務さん、専務さん、専務さん、マイク、マイクが。」
渥美清「マイクがどうしたんだ。」
「はいっちゃってんすよ、声が。スイッチ、スイッチ!」
「それじゃ僕の声がスピーカーから?」
「お客さん、沸きに沸いちゃってますよ。」
「かァー、しまったー。どうしよう?」
「どうしようったって、聞こえちゃったものはしょうがないでしょう。」
「……。只今のは、青木吾一作、哀しき車掌の一節です。お粗末でした……。」

  ▲【173】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【171】カミカゼ野郎 真昼の決斗(1966 にんじんくらぶ・國光影業)監督;深作欣二
  ▲
【172】 ▼【170】

 小型機のパイロット御手洗健、通称ミスタートイレ・千葉眞一、台湾へ飛んで
(文字通り)大暴れ。愛機は単発のセスナ172だが、台湾行は協力・三菱重工業、
双発のMU-2。同じくタイアップのミランダカメラをぶら下げたヒロイン・白蘭
便乗させて日本を発つ。
 当時の台湾は日本車王国のようだ、但しみんな左ハンドル。台北市内のタクシー
は、丸型4ツ目のいすゞベレットの独壇場。千葉が空港から孔子廟へ向かったのは、
古色蒼然とした2ツ目トヨペット初代クラウンのタクシー、観音開き。後ろから追っ
てきた車にシビレをきらした千葉チャン、ハンドルを奪って乱暴にカミカゼ運転。
「台湾観光」社長、悪党・陳財興はごついアメ車、赤いシボレーインパラ。
 陳の部下たちは、3台の日産セドリック、先代ヨコ4ツ目のセダン。
 ヨコ丸4ツ目T型グリルの2代目クラウンは、よみがえった大木実。
 特別出演の高倉健は空色のフォードフェアレーン1959年式。
 そして白蘭の運転するのは、名車、流麗な白い日野コンテッサ1300。赤いと名鉄
パノラマカーを思わせるが、デザインはミケロッティ。ラストはあえなく崖下に転
落、大炎上。ああ、もったいない!でもよく見ると、転落シーンは別の白い車。代
車ですませていたのだった。

  ▲【172】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【170】彼岸花(1958松竹大船)監督;小津安二郎  ▲【171】 ▼【33-2】

 鬼笑介が高橋貞二にマッチを貸す。マッチを見た貞二が笑介に言う。
「おまえ、ルナ行ったのか?」
「ああ、ゆうべ。」
「よせよせあそこ、この頃時々常務がいるんだぞ。」
「コンちゃん会ったのか?」
「うん。」

  ▲【171】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【33-2】その壁を砕け(1959日活)監督;中平康  ▲【170】 ▼【169】

 →前段【33】その壁を砕け

 さてこの映画の舞台だ。
 三国峠を越えて、新潟県。長岡へ下る途中の山間部。コシヒカリで有名な、魚沼
地方の設定である。
 通りすがりの小高雄二が殺人事件に巻込まれる、街道沿いの集落。新潟への一本
道、国道とはいえ、砂ぼこり舞う砂利道。そこに並ぶ郵便局と酒屋。
「相生郡鉢木村(はちのきむら)」という架空の村。新潟市方向に進むと、「天神
橋」で「天神川」を渡り、国鉄「鉢木駅」に至る。非電化の鉢木駅には、「新潟交
通」のボンネットバス「諏訪宿」行が乗入れる。バス停の案内には魚沼地方の中心
である、十日町方面の文字も見える。
 車のナンバーは「新」ナンバー、つまり新潟ナンバー。長門裕之の勤めていた
「鉢木駐在所」、管轄は「相生警察署」。署長は清水将夫、刑事部長が西村晃。
 ここから、捜査に疑問を持った新米刑事・長門は、柏崎、佐渡、さらに見つけた
容疑者を追って上越線、東京は上野へとたどりつく。
 裁判の行われるのは長岡地裁。被告・小高のフィアンセ芦川いづみは、新潟市中
心部、古町の病院を退職して長岡市内に住込む。
 以上が、作品で描かれる背景だ。

 作中に映る地名関係は、丁寧に相生郡鉢木村に直されている。酒屋の看板だけ、
「北魚沼郡」鉢木村とボロが出ていて、街道沿いの村は、やはり北魚沼郡のどこか
ではないか?という推測が成り立つ。
 ところがこれは大きなトラップだった。
 まず、新潟交通のバスというのが、どうやら撮影用の劇用車ではないかという疑
問が湧いてくる。このあたりならば、本来、田中角栄で有名な越後交通の縄張りの
はずだ。
 現場から自動車で20分という鉢木駅。ここでは、容疑者・沢井杏介(事件記者の
エロ薬剤師……そこでは冤罪)の乗ったバスを自転車で追いかけた長門が、発車間
際の列車に飛び乗ろうとする。長門は自転車でホーム際の柵に激突、自転車を乗り
捨て柵を飛び越え、動き出している列車の最後尾ドアの取りつく、ここまでワンカッ
ト。
 この列車の進入のカットでは、先頭に蒸気機関車69636。
 おなじみ「デゴイチよく走る!」という素晴らしい研究サイトを利用させてもら
うと、当該SLは、当時、大宮機関区所属。川越線で「その壁を砕け」ロケに使用
とあるではないか。云われてみると、八高線とのジャンクション、高麗川駅に雰囲
気、ホーム配置が似ている気がする。芦川と署長・清水将夫が歩きながら話す駅ハ
ズレ、当時あったセメント工場関連の砕石を積んだ貨車が入れ替え作業をしている。
さらに、川本三郎氏の著書によれば、日活関係者の証言で、高麗川駅ロケとの記述
があった。
 飛び乗った列車は上野行という設定だが、走行する車内でロケをしている客車の
妻面にはオハフ61399。シートの背ずりが板張りというB級客車、まさに当時、
川越線を走っていた車両である。
 別のシーンで、柏崎から、佐渡へ渡るために新潟へ向う長門。車内ロケをしてい
るのだが、バス窓のディーゼルカー・キハ10系。これも、川越線、八高線の匂い。
 長々とマニアックなことを書き連ねたが、列車関係のロケが、埼玉県日高市(飯
能市の北)の高麗川近くであることから推察するに、事件現場のロケも、新潟県魚
沼地方ではなく、埼玉県入間地方ではないか、という推理が成立つのである。架空
の村であるから、別に山を越えて新潟県でロケをする必要もないのだ。まして、ロ
ケの時点ではまだ、国道三国峠は開通していないと思われる。

 以上、「その壁を砕け」同様に、確たる証拠なしにロケ地の偽証を主張してきた
が、決定的な手がかりを、画面の隅に発見した。
 電柱広告に「キッコーブ醤油」という文字を発見したのである!
 江戸時代から21世紀まで続く御当地醤油、繁田醤油のブランドが、亀甲に「武」
の字のキッコーブなのだ。所在地は入間市宮前町。高麗川駅から直線距離で5キロ
ちょっと。
 このことからも、鉢木村のロケ地は、高麗川駅近くの旧入間郡エリアと、映画ロ
ケ地検察官としては、断定せざるを得ないのである。おそらくは、秩父へ向かう街
道筋か。
 しかし、愛の力には勝てない。どれだけ状況証拠を積み上げてみても、小高雄二
も芦川いづみも、真実は違う、と負けないだろう……。

「それからどうしたの?」
「それから……、ウフフ。」思い出して照れる芦川いづみ。

  ▲【171】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【169】日本のいちばん長い日(1967東宝)監督;岡本喜八  ▲【33-2】 ▼【168】

「失礼します。
 終戦の議が起こりましてからは、わたくしは陸軍の意思を代表し、これまでにず
 いぶん強硬な意見を申し上げましたが、謹んでそれをお詫び申し上げます。
 わたくしの真意はただひとつ、国体を護持せんとするものであって、他意はあり
 ません。なにとぞ、御了承ください。」

「そのことはよくわかっております。わたくしは、あなたの率直な御意見に心から
 感謝を。
 あれもこれも、みんな、国を思う熱情から出たものです。
 しかし、阿南さん、にっぽんの国体は安泰であり、その前途にわたくしは、それ
 ほど不安は感じてはおりません。」

「わたくしもそのように信じてはおります。
 (葉巻の箱を差出す。)
 ……これは南方の第一線から届けてもくれたものですが、わたくしはたしなみま
 せんので総理にと持参しました。」
(一礼して部屋を辞す。)

「阿南君はいとまごいに来てくれたんだねえ……。」

  ▲【33-2】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【168】風の中の子供(1937松竹大船)監督;清水宏  ▲【169】 ▼【167】

 留守番している兄弟、暇を持て余す。兄貴の提案で、布団の上を、弟が泳ぐ。
「おい、オリンピックごっこしよう。」
「オリンピック?」
「うん。水上競技だぞ、ぼくが放送するからサンペイ泳げよ。」
「よし。」
「第1コース、ハムロくん。
 第2コース、タジマくん。
 第3コース……、マエハタさん。
 第4コース、ソンくん。
 第5コース、ドイツ人。
 第6コース、アメリカ人。よーい……。」
「ボクのコースは?」
「あ、そうか。特別コース、サンペイくん。よーい、ドン!
 飛び込みました、飛び込みました――。」
 布団の上で猛然とクロールする弟、御膳の上に立った兄が架空実況をする。
「遅れていた田島くんが三段跳びをやりました。いっぺんに先頭になりました。
 あ、前畑さんが出ました。」
 疲れてビリに落ちる弟、兄が応援の実況。
「サンペイ頑張りだしました。サンペイ、頑張りました、サンペイガンバレ、サン
 ペイガンバレ!」

 前畑ガンバレで有名な、ベルリンオリンピックの翌年の作品。
 葉室、田島、孫、みな日の丸マークをつけて金メダルをとった選手たち。ドイツ
人、アメリカ人を含め、子供らしい思いつき出まかせの選択が楽しい。
 葉室鉄夫は200メートル男子平泳ぎ。田島直人は陸上三段跳び。前畑秀子は200
メートル女子平泳ぎ。そして、マラソン金メダルの孫基禎は朝鮮出身、当時は日本
の支配下だったのである。
 3年後には、アジア初開催の東京オリンピックが決定していたが、北支事変の勃
発により明くる1938年返上する。

  ▲【169】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【167】太陽を抱く女(1964松竹大船)監督;番匠義彰  ▲【168】 ▼【166】  キャストなど


 大家族のミナミ家にやってきた、陽気で素直で働き者でスタイル抜群のお手伝い
さんのミッちゃん・真理明美
 みんなに好かれる性格が逆に災いして、一家のトラブルの種になりかける。しか
し、真理のおかげで、隠れていた家族のほころびが修復し、大団円。終始にこにこ
観ていられる番匠明朗コメディの集大成。
 舞台のミナミ家は「ハラマチ2丁目34番地」こと代々木上原、ロケ敢行。それに
“赤坂”「天八」。

佐野周二……「南元成」退職して会社嘱託、悠々自適、男ヤモメ
柳沢真一……長男「コウイチ」、繊維会社キングレイヨン宣伝課長
久保菜穗子…長男嫁「ハツコ」 専業主婦だがPTAで忙しい、柳沢との間に息子
三ッ矢歌子…長女「ヤスエ」、出戻り、自室でロウケツ染めの教室
清水まゆみ…次女「クニコ」、独立して夫・文太と赤坂で天ぷら店「天八」を営む
小坂一也……次男「メイジ」、売れない画家 タマガワに下宿
山本豊三……三男「ダイゾウ」、大学生 「ステレオ気違い」 真理に惚れる
菅原文太……次女夫「ハチロウ」 赤坂で「天八」、住まいもおそらく赤坂
前田嘉晴……長男の息子「キミオ」、おそらく中学生 ※kine note他参考
真理明美……女中「ユウキミツコ『光子』」 北海道から上京、夢は服飾デザイナー

杉浦直樹……「岡田」社長、三ッ矢の見合い相手 江戸川で鉄工所を経営
岩本多代……小坂の下宿の娘 小坂の恋人
沢村貞子……真理の母おタミさん 佐野の帝大生時代の恋人

生地提供 大和紡、キング商事 「シルバーコート」「ドレス東京」「民芸ルック」
衣裳提供 鈴乃屋……三ッ矢と清水は常に和装、久保は和装と洋装の両方

三洋電機の家電(洗濯機、冷蔵庫)、トリオのステレオがクローズアップ
テレビ局のカメラは「フジテレビ」
ビールはサッポロ壜、大々的

 真理の出演するテレビのファッションショーでピアノを弾き、天八で「お勘定!」
と真理に止められ、清水が「この人は会社が払うからいいのよ。」と言われる男性。
番匠作品でおなじみの作曲家、牧野由多可だと思うのだがどうだろう。
 これでもかと言わんばかりに登場する人物を、次々に無駄なくさばく番匠演出は
見事の一言。
 主演の真理明美、「モンローのような女」に続く売出し作品、奮闘。真理の風貌
の好き嫌いは別れると思うが、この役が岩下志麻だと、完璧すぎてつまらない気が
するのである。

  ▲【168】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【166】七人の刑事 女を探がせ(1963松竹大船)監督;高橋治  ▲【167】 ▼【165】

 ※捜査簿
 →【01】七人の刑事 終着駅の女(1965)

「希望をもって生きなくちゃいけないよ。いつかきっと、生きてて良かったと思う
時が来るからね。」
「……いいんだよ、そんなおいしいこと言ってくんなくっても、ちゃんとわかって
んだから。」

 TBSテレビの人気シリーズ、「七人の刑事」の映画化。
 メインキャストの刑事7人は、テレビ版オリジナルと同一。松竹、日活で計3本
製作されたうちの2作目。
 警視庁捜査第一課7号室の主任警部・堀雄二。以下、芦田伸介、菅原謙二、佐藤
英夫、城所英夫、美川洋一郎、天田俊明。
 ゲストに高千穂ひづる、田村高広。感化院の娘に十朱幸代、香山美子、中村晃子、
青山ミチ。
 3月16日朝6時、荒川河口、葛西橋近くで若い女性の絞殺死体が発見される。
 暴行の形跡はなく、花が手向けられていた。遺留品は、男物の靴が片方だけ。
 不可解な点の多いこの事件を追ううちに、影に別の犯罪の存在が浮上してくる。
 事件に巻込まれた感化院(少年院)の娘。大人にはわからない、ナイーブな院生
たちの心がテーマの一つである。
 モテモテの菅原謙二、若いが今回鋭い推理を連発する天田俊明。
 エピローグに、おなじみのテーマ曲に乗ってやるせない仕掛けでダメ押しのエン
ディング。

  ▲【167】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【165】月給¥13,000._(1958松竹大船/監督;野村芳太郎)  ▲【166】 ▼【164】
  
南原伸二(宏二)…“むつ ごろう” 人事課 九州支社から来た熱血社員
杉田弘子……ホダテ“なぎさ” 経理課 ミスクロフネ、高広のフィアンセ
田村高広……“あさり”浅利安夫 人事課 ※キャスト順位はトップ
三井弘次……“すずき” 人事課 万年ヒラ社員、酒癖が悪い、南原にシンパシー
宮口精二……“かめ野” 人事課長 万年課長
渡辺文雄……“あゆ川” 人事課 西村にべったり、同郷の南原を仲間に引込もうとする
西村晃………“ひる田” 会計課長 杉田を狙う 総務部長と結託、密輸に手を染め免職
石浜朗………“あさりの弟”「高彦」 大洋ゴムを受験、合格のはずが取消されかける

関千惠子……“たにし”マキ 経理課 男を渡り歩く尻軽女
内田良平……“かい塚” 経理課
朝丘雪路……“のり子” ビルのエレベーターガール 内田と愛の巣を求める
三好栄子……“いそ” 独身寮「海風荘」のおばさん
中川弘子……“はま子” 三好の娘
小坂一也……“ます見” 独身寮住人 中川の彼氏 ※プレスシートには厚生課
小田切みき…“えい子” ビル1階、喫茶「ラメール」女給、三井の意中のヒト
川口のぶ……“かめ野の娘”ヨウコ 石浜のガールフレンド
渡辺篤………“たいの田” 焼鳥「鯛ちゃん」社長、大洋ゴム社員のいきつけ

小川虎之助…“下田”社長
北竜二………“さめ島” 総務部長 西村と不正輸出で免職
織田政雄……“しま” 秘書課長 北の免職で、総務部長昇進、宮口を追い抜く
福岡正剛……“たつの” 人事課
稲川善一……“えび原” 資材課長 ※実際には「ハマノ」課長と呼ばれている
清水幹世……“給仕”
落合義雄……“小使” 小使いさん 厚生課売店では養毛剤を試している

中村是好……杉田の父 「三丁目の」カメ屋洋品店、古い店、病身の妻ある様子
春日千里……“わかめ” ハマベ夫人、カンニング受験生の母、大洋ゴム重役の知己
本橋和子……高広の母、未亡人か(表札は高広の名)
水上令子……宮口の妻
後藤泰子……篤の店「鯛ちゃん」の小女、カメちゃん
水木涼子……“かまとと” 芸者
水島光代……“かもめ” 芸者の一人か?
江間光括……料亭の女将?
村上記代……連込み旅館「平安樓」女中

井上正彦……人事課「鯵野(アジ)ノ」 妻帯者
高木信夫……人事課「鮭田(シャケタ)」 妻帯者
□□□□……人事課「シラス」
志賀真津子…人事課「ホラ」 タイピスト
今井健太郎…庶務課
土紀洋児……秘書

谷よしの……“仲居” 料亭の女中
山本多美……同 女中
御室蘭子……かもめ洋品店のアキちゃんか?
草香田鶴子…加盟店歌舞伎座招待の客
竹田法一……加盟店歌舞伎座招待の客
山本幸栄……加盟店歌舞伎座招待の客
大杉莞児……加盟店歌舞伎座招待の客
千村洋子……ビル食堂の客、おそらく社員
川村禾門……ビル食堂の客、喫茶ラメールの客、社員?

日本橋際
「東京会館ビル」の名はダミーか、玄関と屋上は別のビル
屋上は國分ビルデング(ごく小さい「ィ」の字がデとンの間に足されている)
現・日本橋1-1-1、建て替わったが今もK&K国分本社。
玄関は、国分ビルの南向い
常磐橋公園
疑似夜景、高広と杉田の破局
渋谷・道玄坂上
富士見台街の連込み宿「平安樓」、出たところは銀座線車庫脇スロープロケ
渋谷・猿楽橋
独身寮は橋のたもとの設定、南原が杉田にプロポーズ。
ただし、寮の正面の坂のロケ場所は別の場所
神田・万世橋
肉の万世店内ロケ、人事課慰労会のすき焼屋
https://www.niku-mansei.com/contents/02nazo/nazo_04rekisi01.html

   ▲▲ページ冒頭▲▲  ▲【166】


【164】○秘 ハネムーン 暴行列車(1977日活/監督;長谷川安春)  ▲【165】 ▼【163】
  
 映画はストーリーを説明するために映像があるのではなく、ステキな映像・シー
ンを伝えるために脚本がある、と常々思っている。とはいえ、脚本が良くできてい
てこその話だ。

 違法カジノを襲撃、大金を掴んだとたんに手入れを食らい、ついでに太腿に弾丸
を食らって一文も稼げずに逃げる羽目になったバディ、阿部徳昭加藤寿。その二
人に逃走のために運転手として拉致された花嫁・八城夏子。彼女もまた、結婚式を
挙げた直後に、控室で花婿からレイプまがいにセックスを強要され、将来に幻滅し
ていた。
 そんな情けなくも愛おしい3人組の逃避行。♪フォギー・マウンテン・ブレイク
ダウンに乗って、現場から走り出したコロナは早くもコースアウト。
「アタシ、(運転は)下手なんです!」
 川の土手、法面に落ちたクルマを打ち捨てて、舞台となるのは、貨物ヤードに止
まっていた箱型の貨車「ワム62557」。
 暗くなるまで隠れ家にするつもりだった貨車が動き出して、ジャパニーズ「アメ
リカンニューシネマ」、ロードムービーの始まり、始まり。
 監督の長谷川安春、脚本の桂千穂、やりたいことがはっきりしていて潔い。カッ
コ悪いところがイカシテいる、八城、阿部、加藤、役者もぴたりとはまっている。
タバコはショートホープ!

 駄菓子屋の爺相手に、八城がストリップ風に秘部を小出しに見せて、タダで食料
を調達するシーン。歳はとっても男は男、日活の常連端役、伊豆見英輔(雄)の演
じる爺さんが可愛らしくも切ない。

 設定では、森の中のホテルから片田舎の駅。列車は山へ向かい、東北方面。終盤
の不良連中のバイクが「福島」ナンバー、ラストのパトカーには「山形県警」と書
かれている。

 走行シーンのロケは中央東線(本線)。電気機関車EF64(0番台)の挑む山峡は、
甲斐路、山梨県。そのへんは、鉄道マニアでなくても、車窓好きにはピンとくるだ
ろう。阿部と八城が街に買い出しに出ている間に走り出してしまった貨物列車を電
車で追いかけ、追いつくのは初狩駅。スイッチバック構造が残っているので有名な
駅だ。
 二人と別れて八城がたたずむ跨線橋は、猿橋駅東方の橋だと思われる。
 画面のバックにたびたび映り込む中央高速道路。鳥沢駅付近の中央本線新桂川橋
梁のコンクリート橋脚もちらりと。大月市近辺のロケが多い。ただ、発端=ラスト
の貨物引込線は不明。79年当時すでに、普通貨物を扱っている駅はかなり限られる
のだが……。
 スーパーマーケットのシーンは調布市内で、おなじみ日活らしい御愛嬌。
 4回夜を迎えても終点に着かないのは大陸横断鉄道並だが、ファンタジーだから、
いいのである。脚本家と監督が見せたいシーンが思いつく限り、終点は無いのだ。
 しかし、肝心のワム62557、実際には、1駅はおろか、1ミリも動いていない。
にもかかわらず、絶妙のカメラアングルとカット割り、編集が見事で、観客もなか
なか気づかない。
 阿部が、走行中の貨車の扉を開けて屋根によじのぼり、前方の車両へ、水を求め
て移動する。列車が走っているように見せるためにカメラマンがカメラを揺すって
いるわけだが、そのブラし方がまさに絶妙。筆者は列車の疑似走行シーンを数限り
なく見てきたが、ナンバーワンである。ライティング、走行音共に良し。ロマンポ
ルノでありながら、性交シーンより走行シーンに手間をかけている。

 なお、日活公式サイトにまで出演者に結城マミとあるが、それらしい登場人物も
場面もない。見返してみたがやはりクレジットなし、こっちはロマンポルノ初心者
なんだから、頼みますよ。


   ▲ページ冒頭▲  ▲【163】
【163】学校(1993松竹・日本テレビ・住友商事/監督;山田洋次)  ▲【164】 ▼【162】
  
「センセイ、オグリキャップについちゃあ、一言あんだよ。悪いけど時間くんねえか?」
「あ、やる?あ、そう?ええ?」
 田中邦衛が、浪曲師のように教卓の両脇をつかんで、声を張る。
「年の瀬も押し詰まった、平成2年12月23日。
 夕闇迫った中山競馬場。第35回有馬記念!」
「ヨッ、イノさん!(萩原聖人の「大向う」)」
「パッパパー……。さァ、最後の一頭がはいった。
 ――ゲートが開いた!一斉に飛び出す16頭のサラブレッド。
 第一コーナー、第二コーナー……。各馬タテ一列の長ーい展開だー。
 オグリキャップは6頭目の外についてる。
 先頭はオサイチジョージだー、スローペースに落としてるゥ……。
 第三コーナー、第四コーナー……。
 ――いよいよ直線だァ、さあ……、行け、オグリキャップ。(しぼり出すように)
 坂を上がった!武豊のムチがはいったー!
 オグリキャップ、出た、出た!走れェー、オグリキャーップ!
 公営出身ゆえにクラシックに出られなかった、無念の名馬、悲運の名馬『オグリキャップ』!」
 早いぞ、早いぞ。各馬まるで止まったようだー、オグリキャップが追い抜いてゆくー。
 行っげえェ、オグリ!
 無念を晴らせー、行けー、行けェー、行けェ―!」
(スタンドで観戦している田中邦衛のアップ、ゴールインを目で追って、感無量の表情。)
「よくやったよォ……。」

  ▲【164】 ▲▲ページ冒頭▲▲

【162】朝を呼ぶ口笛(1959松竹大船/監督;生駒千里)  ▲【163】 ▼【161】

 キャスト他詳細

 松竹大船お得意の下町人情もの。当然みんな暮らしは豊かではない。今回は新聞販売店、
新聞少年がモチーフ。
 荒川放水路土手下にある、お内儀沢村貞子が切り盛りする“小池新聞舗”、看板に葛飾区
下千葉町7の2とあるけれど、旧下千葉町(住居表示で消滅)は川には接していないので、
この看板は撮影用の道具である。しかも、ロケ場所は葛飾区ではなく、対岸の墨田区八広6
丁目だ。
 主人公、吉井稔少年・加藤弘の慕う夜間大学生、やはり新聞配達の須藤隆司・田村高広が、
押上行の京成電車が駅に到着するのを待って踏切を渡り、土手を降りてくる。位置関係から
考えると、京成押上線の荒川駅、現・八広駅から坂を北に下りたところ、その角に新聞店が
ある。左隣がそばやで、それなりの商店街に見えるが、2021年にはまったく面影はなく、
とんかつ「三好弥」が1軒あるのみの寂しい場所。しかし土手上から見下ろす景色空間は、
映画の雰囲気を残している。絵になるロケーションだ。ちなみに三好弥のかつ丼B(上)は
770円で美味である。
 八広駅自体、高架の立派な駅になってしまった。同じく松竹の貧乏庶民映画、下町の太陽
(1963松竹大船/監督;山田洋次)で、勝呂誉が倍賞千恵子を呼止る場所も、この駅を下り
る坂道だ。
 高広のフィアンセは、京成バスの車掌、瞳麗子。奥戸営業所の映るシーンで、誇らしげに、
日野ブルーリボン(センターアンダーフロアエンジン)が出庫してゆくが、後はいすゞBX、
無骨なボンネットバスがずらりと並ぶ。同僚バスガールに、町田祥子、空伸子、堀みどり、
佐谷よし子。
 新聞店住込みの配達員に、田村保、吉野憲司、田中晋二、佐山彰二。
 加藤弘少年の父、体を壊した織田政雄、このへんは鉄板キャスト、その上に入院する母は
井川邦子。内職をまわして一家を気に掛ける工場主に殿山泰司、これまた盤石の布陣。
 そんな中、一輪の百合の花、上目づかいの吉永小百合。おっと、カメオで渡辺文雄。

  ▲【163】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【161】猫と庄造と二人のをんな(1956東京映画/監督;豊田四郎)  ▲【162】 ▼【160】

♪マンボ、バッカーン

 水着姿もまぶしい、はじけるアプレ・香川京子。表情で語る山田五十鈴、達者な浪花千栄子
 顔にブチのあるおとなしい白猫「リリー」、おなじみダメ男・森繁久彌
 東京映画製作だが、舞台は兵庫(芦屋、西宮、東灘)で、キャストも宝塚映画的。香川の
アプレ仲間に環三千世。バラ売りだが芦乃家雁玉・林田十郎コンビ。雁玉の妻は、江戸から
遠征、上方言葉でも威勢のいい都家かつ江。
 香川の朝食はトースターでパンを焼き、バターを塗って食べる。
 メロンにかぶりつく千栄子、薄ーいスイカを食べる山茶花究。蚊帳、扇風機、盛夏の物語。
 夜の阪神国道。中央の国道線の石畳を歩く香川と環。広いレール幅、後ろから金魚鉢と呼
ばれた阪国のチンチン電車の光が近づいてくる。

「小鰺のとれとれェー。」(谷晃)

※短縮版には、環三千世の出演シーンはカットされていた。したがって阪国電車のシーンも
無し。

  ▲【162】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【160】暁の翼(1960大映東京)監督;富本壯吉  ▲【161】 ▼【159】

 大映の菅原謙二といえば、柔道の腕が立つ朴訥なスターであるが、筆者のイメージは、四
六時中、煙草を吸っている男、である。実生活でもヘビースモーカーであったようだが、ス
クリーンでもせわしなく煙草をふかしている。
「氷壁」(1958大映東京/監督;増村保造)では、合計7本。野添ひとみとの糸を引くキス
シーン、野添はさぞ煙草くさいと思ったことであろう。
 さて、その菅原謙二が主役級ながら、1本も煙草を吸わせてもらえないのがこの作品。菅
原は航空自衛隊の教官、キタガワ一佐役。登場シーンは訓練機に乗り組むシーンと、燃料の
欠乏から脱出して落下傘降下、洋上でひたすら救援を待つシーンしかないのである。4月と
はいえ凍える太平洋上、食料もなく、薬品で精製した海水しか飲むものもなく、孤独な状況。
しかし、もっともつらかったのは、煙草がないことだったろう……。
 本作は、防衛庁、海上保安庁、在日米軍の協力で、実際の軍用機や艦船がふんだんに登場
する。空自の新田原基地には、訓練機のT-33(サンサン)がズラリと並んで壮観。菅原と
友田輝の乗組んだT-33、257号機は、土佐沖で消息を絶つ。悪天候の中、無線設備の故障と、
計器の故障がうかがわれるのだが、観ている方には、具体的な不具合がよくわからない。
 海自の鹿屋基地から捜索に飛び立つのは、高松英郎三田村元のP2V(ピーツーブイ)。
海自は「駆逐艦あやなみ」(実際は護衛艦)、海上保安庁は「しきね」が海から救援。
 にもかかわらず、なんとなくサスペンス感がない。
 管制塔のシーンも本物の施設を使って撮影が行われているようだが、本職の協力が、不幸
にも、緊迫感をそぐ結果になっている気がする。まして、菅原と友田は、中盤以降、それぞ
れ、ゴムボートで洋上をぷかぷか浮いているしかないのである。実話がもとになっていると
はいえ、空自と海自と海保、それに在日米軍が初めから見事に協力してしまうので、ドラマ
も生まれにくいのである。自衛隊と三田村元の宣伝映画なり。
 部下の失踪に心を痛め、菅原の妻・左幸子と友田の妻・金田一敦子の心配に心をくだく温
和な司令官に、おなじみ軍人幹部俳優、藤田進。ただ、部下の早川雄三とともに、「板付」
(いたづけ)基地を「いたつき」と発音してしまったのは、役者魂に軍人魂が降伏してしまっ
た結果であろう。
 ふだん、憎たらしい子供の役が多い島津雅彦が、素直なのももったいない。姉役は後の大橋
巨泉夫人の子役スター、浅野寿々子。

  ▲【161】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【159】どろ犬(1964東映東京)監督;佐伯孚治  ▲【160】 ▼【158】

 昔気質の真面目な刑事・大木実。昔気質というより、悪しき刑事体質が転落を呼ぶ。転落
させるコケットな女に原知佐子、狡猾でワルぶりの光るヤクザに、西村晃

 城北地区映画。地名は架空なので、どのあたりの設定かは不明だが、印象的に登場するの
は、中山道沿いにあった、滝野川のガスタンク。円筒形の上下する「有水式ガスホルダー」。
中山道、ガスタンク、都電18系統は当時の板橋の象徴である。
 架空の地名を使って、刑事ものだから各地を転々、観ているこちらはどこがロケ地か気に
なって困る。白黒画面だが、濃色の車体に明るい帯をまいた電車は、オレンジに黄帯時代の
東武東上線。
 “栄町”駅、駅のすぐ脇の踏切を渡って電車が進入、奥にガスタンクを遠望。カーブの感
じと駅舎の構えは、東上線の下板橋のようなのだが、映る電車が茶色一色。となると国鉄の
赤羽線か。
 夜、チョウさんことスガイ部長刑事・大木実が、ヤクザ幹部ヤマグチ・西村晃の潜伏する
“太平ホテル”近くの駅の公衆電話から“西坂町署”に電話をする高架の“かみおおはし”
駅ホーム。「2番線 田端上野東京方面」という掲示と、ホーム端に下りる階段から推測す
ると、王子駅の南口側。現在は電車2両分ホームが伸びているが、屋根の支柱が階段を境に
新しいものになっている。南口が当時あったかは不詳だが、この階段を下りた改札を出ると、
飛鳥山下架道橋につながる。本作には登場しないが、古レールを使った優美な中路式アーチ
橋は、やはり城北地区が舞台の「花嫁は十五才」(1964日活/監督;江崎実生)で、山内賢
と和泉雅子が渡る跨線橋。昼のシーンでは、駅事務所の駅員に岡野耕作。
 アベ刑事・亀石征一郎が、大木に襲われる跨線橋は、ちょっと足を延ばして、日暮里の南
方、ロケ名所の御隠殿坂橋。

  ▲【160】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【158】幌馬車は行く(1960日活)監督;野口博志  ▲【159】 ▼【157】

 列車強盗に幌馬車、テーマ曲はローハイドをモチーフに、クライマックスは立山連峰の日
活ウエスタン。芦田伸介率いる花のジプシーこと移動養蜂隊。山道を行くには馬車の方が便
利、と頑固に幌馬車を連ねる。
 むりやり、おわら風の盆を取り入れるなど、大々的に富山ロケ。さりげなくアピールする
アルプス牛乳。通りがかるトラック運転手・長弘は富山じゃおなじみNACHIマークの不二越。
 察するに、赤木圭一郎の加担する冒頭の列車強盗も富山県内の設定だが、襲われる蒸気機
関車はC11205。
 風の盆、越中八尾駅前。ホームには芦田の娘・笹森礼子を乗せた列車が進入、先頭にC11、
続く客車は「東ムイ」所属のオハ61系。何が言いたいかというと、汽車の撮影シーンは東京
都下、五日市線、という夢のない結果に。日活はこの頃、SL撮影に、五日市線をよく使っ
ている。C11276の横に「えっちゅうやつお」という駅名板が映るが撮影用の道具であろう。
 ※参考資料……「デゴイチよく走る」サイト http://d51498.com/

 夏休みを利用したという笹森礼子のセリフによれば、冒頭のシーンは7月。しかし、列車
強盗の新聞記事は日付が10月4日。風の盆は9月あたま。そのあたりは気にしても仕方ない。
 西部劇スタイルの連中が、雄大な立山連峰を行き、スペクタクルが展開する、それだけで
もわくわくするではないか。

  ▲【159】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【157】ワニと鸚鵡とおっとせい(1977松竹)監督;山根成之  ▲【158】 ▼【156】

 名コンビ、郷ひろみ樹木希林。そこにドライな美少女・秋吉久美子
郷 「オマエよォ。」
希林「お前じゃないでしょ。」
郷 「メリーさん。」
希林「(猫なで声で)なァにィ、ゴー。」

 発端はハワイ。ロケ敢行。東京に帰ってからは、谷中・日暮里映画。メインの舞台は谷中
宝来町という架空の下町、セットだが、そこここにロケシーン。
 拙稿筆者は千駄木に住んで28年。映画館でこの作品を見る2時間前にも、ロケ地にいた。
今では「谷根千」と呼ばれる界隈も、不忍通り沿いや、谷中銀座の商店はずいぶん変わって
しまったのだが、作中に登場する台上のロケ地は、40年たっても容易に特定できる。
 設定としてはと「ある下町」ということだろう、都電の走る街というイメージ付けに、王
子〜梶原の都電荒川線沿いも登場、電車は赤帯を巻いて車掌乗務時代である。

  ▲【158】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【156】虹をわたって(1972松竹大船)監督;前田陽一  ▲【157】 ▼【155】

 国民的アイドル、天地真理。今思うとなぜあそこまで「国民的」熱狂であったのか?
 リアルタイムで体験している世代としては、可愛らしいと思ったし、「マリちゃん自転車」
なんて、自転車の商品名にまでなったのだ。子供心にも、みんなが物真似したあの特徴的な
発声は、あまり上手だとは思わなかったが。
 そして月日は流れて、没落したアイドルの第一人者のように語られ、絶頂期の写真を見て
も、たいして美人にも見えないのである。魔法が解けたように。
 ところが、ひとたび、スクリーンに登場するや、その疑問は吹っ飛ぶのであった。
 富士山の松竹マークに続いて、歩いている天地真理の足のアップにタイトル。バックにヒッ
ト曲「虹をわたって」のイントロ。
♪ルルルルルンルンルン……
「虹の向こうは、晴れなのかしら、あなたの街の、あのあたり――」
 歌いながら横浜を歩く可憐で華麗なマリちゃん、この多幸感、なんというウキウキするオー
プニングであろう。当時の人気の理由を再認識、御免なさいと頭を下げる。
 というわけで、全編に天地真理の魅力爆発。王道アイドル映画。
 大好きなパパ・有島一郎が、若い娘・日色ともゑを後妻に迎えると知って家出したマリちゃ
ん。泊るところがなくて、行きついた先は、水上のドヤ「蓮花荘」。女将は熱心な天理教徒
武智豊子
 なべおさみを始めとする住人連中に囲まれて、山本幸栄と左時枝の食堂船でアルバイトを
したり、競艇で大儲けしたり、温泉宿に売り飛ばされそうになったり、沢田研二のヨットで
遭難しかけたり。
 大岡川、黄金町あたりを舞台に、深窓のマリちゃん、ひと夏の冒険。白雪姫とドヤ船(ダ
ルマ船)の9人の小人。

 八卦こと岸部シロー、街頭で易者、バックの人相の幕は、寅さんが使っていたのと同じ顔
だ。

  ▲【157】 ▲▲ページ冒頭▲▲

【155】当りや大将(1962日活)監督;中平康  ▲【156】 ▼【154】

 出演した近江大介氏によれば、実際に釜ヶ崎で、1ヶ月に渡ってロケ撮影をしたという。

 丸にNKマークのレリーフ。大阪駅前からタクシーに乗込む嵯峨善兵。
「カマガサキまで。」
「えっ……、当たられまっせェ。」
 並走する大阪市電929、タクシーから望む大阪の街にタイトル、スタッフ、キャスト。
 東京の山谷、横浜の黄金町と並び称された大阪の労務者街。その中心、三角公園の端をか
すめて通る阪堺電車の車号で丁半の小バクチを打つ、大将・長門裕之一味。タクシーが通り
がかると知るや、慣れた様子で体当たりする長門。たちまち取り囲む群衆、長門の味方。し
かし、客の嵯峨は、驚きもせずに、窓を開けて鷹揚にふるまう。彼は、着任する警察署長な
のであった――。

 釜ヶ崎の連中を優しく見守る刑事「キリストさん」浜村純。ふつうは、2、3年しかもた
ないところを7年もいるという彼が、新署長の嵯峨(と映画の観客)に、管轄の概要を説明
する。実写映像を盛りだくさんに生々しい。盗品はここで売りに出る、パンパン1200人……。
 そんなバイタリティあふれる化外の地で、禍福が、あっけらかんと展開する。己の今日の
幸せだけを求める住人たちは、街の掟に背かない限り、決して悪びれることはない。
 
 主演の長門、それにもう一人の主役、轟夕紀子。夫は無く、息子・頭師佳孝を大学に行か
せることだけが夢で、狭いホルモン屋台を営む肝っ玉かあさん。酔っぱらいたちがコップで
「チュウ」をあおり、天井から蠅取りリボンのぶら下がる濃厚な空気の屋台は、いまは亡き、
南海天王寺線のわき。山茶花究が取り仕切る三角公園の南縁。夜になると、名物の凸型電気
機関車に牽かれた貨物列車が通り過ぎる。轟と長門が住むバラックは、少し北に離れた大阪
環状線の築堤下。新今宮駅の東方、関西本線のSLや新鋭キハ35、環状線の101系電車。
南海の高架には雑多な電車。
 長門のカノジョ、弁天のおハツ、したたかにはじけるパンパンに中原早苗
 暑苦しくもはかない、中平・新藤版「生きる」。
♪雪の降る街にー

  ▲【156】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【154】暖春(1965松竹大船)監督;中村登  ▲【155】 ▼【153】 →キャスト

 秋の京都東山。ウェブ情報によれば所は南禅寺。小料理屋「小笹」の前に駐車して
いる白いオープンカー、ルノーカラベル。群がる子供たちを、店の中から暖簾を出し
に来た長門裕之が追い払う。ねじり鉢巻きの長門は、灰皿をテーブルに置いたり、真
面目そうに開店の準備をしている。そこへ、重そうなコートを羽織った恰幅の良い
山形勲が、首をすくめるように、狭い店に這入ってくる。いわくありげに店を見回し
つつ、
「まだ早かったかな?」
「いえ、かまいまへん。」
 腰掛ける山形に長門がおしぼりを出す。
「京都はやっぱり寒いねえ。」
「お客さん、東京の方?」
「ああ。チヅちゃんは元気かね?」
「今、錦の方に買い物に行ってま。お知り合いの方ですか?」
 長門が相好を崩す。長門は燗酒をつけながら、チヅのことをほめ、自分が婿候補の
ようなこと語り出す。長門の話に相槌をうちながら、ようやく山形は、店の女将につ
いて尋ねる。
「女将さんやったら、裏で掃除してはります。」
「なんだ!おせいさんいるの?」
 勝手知ったる様子で、店の奥に踏入る山形、裏の方に声をかける。出てくる和装の
森光子
「いやあ、ヤマグチセンセ!」
 なつかしそうに声をはずませる森は、奥の座敷に山形を招き入れる……。
 セリフはうろ覚えで恐縮だが、この冒頭のシーンから、色調といい、カメラワーク
といい、穏やかで流麗に、いかにも松竹映画という優美さが横溢している。山形の芝
居が絶品、それを、生粋の京育ちの長門と森が、きれいな京言葉で受ける。

 主演の岩下志麻、実際は吉祥寺育ちとはいえ銀座生まれ。東京っ子の志麻が、京言
葉をこなして、御転婆な京娘を演じる。当時25歳、容姿端麗、志麻の魅力が爆発。特
に、酔っぱらった志麻のキュートさたるや。脚本の狙い通りに演技する達者さも光る。
 映画のストーリーは、現代の価値観・規範で測ると、人によっては眉をひそめるよ
うな人間関係だが、情感を楽しみ岩下志麻を愛でる、小津系の古き良き松竹上流階級
映画である。

「行きまひょー。」

紅萌ゆる岡の花 早緑匂う岸の色――


  ▲【155】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【153】軍国酒場(1958大映東京)監督;西村元男  ▲【154】 ▼【152】

公開は終戦後13年たった1958年。映画館の動員数がピークに達した年。

 歴史に埋もれるSP映画、シスターピクチャー。邦画全盛期に、2本立て封切の抱
合わせに量産された、無数の他愛ないB級映画群。毒にも薬もならないコメディ作品
の1本に過ぎない本作だが、どうしてどうして愛すべき奇跡の1本。まさか、60年後
に阿佐ヶ谷で公開されているなんて、作った側も誰も思うまいし、残すつもりで作っ
てもいまい。上映しているラピュタ阿佐ヶ谷だって、軽い気持ちで番組に混ぜている
ことだろう、自信たっぷりに軽く。
 主演が大学生役の石井竜一仁木多鶴子。柔道のできる二枚目として売出した石井
と、廉価版若尾文子の仁木、少し陰と剣のある美人・仁木――本稿筆者・寒空はだか
はファンなのだが――、いかんせん、2人とも映画界で後世に名の残らなかった存在。
もう2人の主役、潮万太郎清川玉枝、大映に無くてはならない強力な脇役が、力業
で物語を引っ張る。そして今1人、120%の性能を発揮する、春本富士夫(尾上松也
の祖父)。
 令和初頭に50代の筆者の世代でも、一般人(旧作邦画マニアではないマトモな御仁)
にわかる出演者は、おそらく中條静夫(酔客の役)くらいだろう。
 舞台は、帝国陸軍をモチーフにした、今でいえばコスプレバー。軍隊酒場「さくら
兵団」。一段高いステージで盛大に演奏される軍歌、チャイナドレスや従軍看護婦ス
タイルの女給に、軍服姿のボーイ。当時はやりの「逆コース」に便乗したキャバレー、
おそらく四谷か新宿あたり、二線級の歓楽街。
 バックに流れるのが無数の軍歌、それも明るい曲が多いので、きびきびとテンポよ
く物語は進み、ラスト5分で伏線回収。強引だが、ばかばかしさのせいもあって無理
を感じさせない。「ラバウル小唄」から「水師営の会見」が流れる中、いがみあって
いた男女が握手して大団円。ついでに、市川和子と鶴見丈二もいい仲になって「終」
マーク。観客がポカンとしている間に、映画館の灯りがつく、この清々しさよ。
 例によって、観ていない方には何のことやらわからないかもしれないだろうが、こ
のどうでもよい満足感は何であろう。こんな、流麗で肩の凝らない映画、そうそう撮
れるものではない。
 冷蔵庫の残り物、ありあわせだが多彩な具材をあれこれ鍋に詰込んで、ちゃちゃっ
と美味しい副菜の出来上がり。細部までいちいち下らなくて手抜きなし。

 オープニング、ひるがえる旭日旗にタイトル「軍隊酒場」。軍艦マーチにのって銀
座のネオン、カメラはだんだん暗い街の方向へ、曲は「日本陸軍」(♪天にかわりて
不義を討つ、のインスト、ジャズ調)に乗りかわる。
 キャバレーの入口に立つ、歩哨ナガシマ一等兵・阿部脩、乃木将軍のようにヒゲを
たくわえている。呑みすぎて倒れた客、「衛生兵!」、運ばれてくるタンカ、かけつ
ける看護婦、バックには婦人従軍歌。
 クライマックス、尻風船つぶし合戦のバックには、ジャズアレンジの分列行進曲。
雨の外苑は遠くなりにけり。
「想ひ出のカクテル 120円」ラバウル、インパール、空の神兵、撃沈、……。
 メニュー「戦勝料理」はテキにカツ、「クリーク」はスープ、「トーチカ」は……、
なんだったか。

 会社の重役級の役は無いので、大映名物重役連中は登場しない。
 チンピラ3人組、実際のヘルシンキの銀メダリスト・浜口喜博に、おなじみ三角八郎
と丸井太郎コンビ。そして大物役……、八木沢敏!――見覚えはある存在感なのに知ら
名前だと思ったら、北城寿太郎であった。。藤巻潤は、まだ仕出しのノンクレジット。
 大映の手ごろな美人、田中三津子もちらりと役があって、満足である。


  ▲【154】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【152】独立愚連隊(1959東宝)監督;岡本喜八  ▲【153】 ▼【151】

「ザマアミヤガレ!」と、颯爽と馬を駆る馬賊!上原美佐
 佐藤允中谷一郎。憎々しい中丸忠雄南道郎、ヒーロー・鶴田浩二、悲劇のヒロ
イン・雪村いづみ
 陽気な朝鮮人慰安婦に中北千枝子、「ノリニケタメヨ。」
 そして嬉しい、沢村いき雄瀬良明の活躍。
――所謂大東亜戦争末期 北支戦線 山岳地帯
「将軍廟・こだま大隊」と独立90小哨隊の陣地。単身乗り込んでくる毎朝新聞記者
アラキ・允。ヤマオカ少尉・瀬良明は、部隊でいても怖いのに、一人で怖くないのか
允にきくと、「危機が近づくと手のひらがむずがゆくなるんでさ」。
瀬良「片方譲ってもらいたいぐらいのもんだ。」
 ぽりぽりかじる乾パンが、やけにウマそうにみえるが、今のサンリツの缶入りのよ
うに美味しくはないのだろう。
 キハチ監督が描く大陸版ウエスタン。

「ブローニングってやつは――。」

  ▲【153】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【151】音楽喜劇 ほろよひ人生(1933P.C.L.)監督;木村荘十二  ▲【152】 【150】[第2部]

「戀は魔術師」
♪星かスミレか 優しの瞳
 たまにゃこちらを見ておくれ
 泣きの涙を笑いにかくす
 わたしゃ浮世の道化者

 主人公は藤原釜足、スターは千葉早智子、クレジットトップは徳川夢声。トーキー
映画が登場して三年目、日中戦争は始まっているが二・二六事件前。戦前の繁栄を謳
歌する東京、モダンな音楽仕立てのラブコメディ。
「ようようまち」という電車駅のホーム。サラリーマン相手に生ビールを売るエミコ
・千葉早智子(ウェイトレス風衣裳)と、アイスクリーム売りのトクキチ・藤原釜足。
セットの感じが、レビューの書割っぽくて良い。省線電車か郊外電車か、ホームには
「ROMANCE CAR」と「サラリーマン電車」がやってくる(もちろん架空)。
 千葉に惚れている釜足は、一緒にビヤホールの開店を夢見るが、千葉は、ハンサム
な音楽家の卵のアサヲ・大川平八郎といい仲。
 同年、夢声と「笑の王国」を立ち上げた二人、ワンポイントで、駅の物売(壜ビー
ルやグラフ誌、弁当)に、大辻司郎、おなじみのカン高い巻き舌。千葉と大川が公園
で語らうシーンの露払いに、古川緑波がレビューガールと歌合戦。
 大日本麦酒とタイアップ、千葉がホームで押し歩く、台車に乗った樽型ビールサー
バーが面白い。樽の腹に「ヱビスビール」。

  ▲【152】 ▲▲ページ冒頭▲▲


【101〜150】第2部
【150】あした晴れるか(1960)
【149】反逆兒(1961)
【148】喜劇 男は愛嬌(1970)
【147】鏡の中の裸像(1963)
【146】わんぱく天使(1963)
【145】千羽鶴(1953)
【144】(あす)明日をつくる少女(1958)
【143】電話は夕方に鳴る(1959)
【142】はだかっ子(1961)
【141】野を駈ける少女(1958)
【140】若い恋人たち(1959)
【139】有頂天時代(1951)
【138】姉妹(1955)
【137】花嫁の抵抗(1958)
【136】警視庁物語 十五才の女(1961)
【135】白い閃光(1960)
【134】続ますらを派出夫会 お供は辛いネの巻(1956)
【133】冷飯とおさんとちゃん(1965)
【132】関の彌太ッぺ(1963)
【131】ゆうれい船 前篇/后篇(1957)
【130】三等重役(1952)
【129】芸者学校(1964)
【128】夕陽に赤い俺の顔(1961)
【127】ジャズ・オン・パレード ジャズ娘乾杯!(1955)
【126】カレーライス(1962)
【125】おヤエのママさん女中(1959)
【124】新幹線大爆破(1975)
【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
【119】四畳半物語 娼婦しの(1966)
【118】雲がちぎれる時(1961)
【117】水溜り(1961)
【116】ある見習看護婦の記録 赤い制服(1969)
【115】男はつらいよ(1969)
【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
【113】刑事物語 知り過ぎた奴は殺す(1960)
【112】刑事物語 前科なき拳銃(1960)
【111】吹けば飛ぶよな男だが(1968)
【110】刑事物語 銃声に浮かぶ顔(1960)
【109】名もなく貧しく美しく(1961)
【108】接吻泥棒(1960)
【107】一刀斎は背番号6(1959)
【106】やさぐれ姉御伝 総括リンチ(1973)
【105】女の暦(1954)
【104】刑事物語 東京の迷路(1960)
【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
【102】東京のバスガール(1958)
【101】新東京行進曲(1953)

【01〜100】第1部
【100】君も出世ができる(1964)
【99】父子草(1967)
【98】地方記者(1962)
【97】花のお江戸の法界坊(1965)
【96】童貞先生行状記(1957)
【95】駅 STATION(1981)
【94】大いなる驀進(1960)
【93】三十六人の乗客(1957)
【92】高度7000米 恐怖の四時間(1959)
【91】キングコング対ゴジラ(1962)
【90】かも(1965)
【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
【88】拳銃0号(1959)
【87】希望の乙女(1958)
【86】旅情(1959)
【85】人間に賭けるな(1964)
【84】日本暴力列島 京阪神殺しの軍団(1975)
【83】東京湾(1962)
【82】野獣狩り(1973)
【81】ひとりぼっちの二人だが(1962)
【80】ギャング同盟(1963)
【79】明日は月給日(1952)
【78】もぐら横丁(1953)
【77】好人物の夫婦(1956)
【76】愛情の都(1958)
【75】警視庁物語 行方不明(1964)
【74】喜劇 男の泣きどころ(1973)
【73】橋(1959)
【72】東京の恋人(1952)
【71】特急三百哩(1928)
【70】アリバイ(1963)
【69】私は負けない(1966)
【68】月曜日のユカ(1964)
【67】おんなの細道 濡れた海峡(1980)
【66】続・酔いどれ博士(1966)
【65】ダニ(1965)
【64】硝子のジョニー 野獣のように見えて(1962日活)
【63】誘惑(1957)
【62】集金旅行(1957)
【61】ゴジラ(1954)
【60】閉店時間(1962)
【59】山鳩(1957)
【58】次郎長社長と石松社員(1961)
【57】サザエさんの青春(1957)
【56】背後の人(1965)
【55】重役の椅子(1958)
【54】川のある下町の話(1955)
【53】泣いて笑った花嫁(1962)
【52】はだしの花嫁(1962)
【51】のれんと花嫁(1961)
【50】ふりむいた花嫁(1961)
【49】わたしの凡てを(1954)
【48】愛人(1953)
【47】花嫁のおのろけ(1957)
【46】恋人(1951)
【45】33号車応答なし(1955)
【44】真田風雲録(1963)
【43】嵐を呼ぶ楽団(1960)
【42】目白三平物語 うちの女房(1957)
【41】人形佐七捕物帖 めくら狼(1955)
【40】流れる(1956)
【39】結婚のすべて(1958)
【38】踊りたい夜(1963)
【37】風流温泉日記(1958)
【36】喧嘩鴛鴦(1956)
【35】早射ち野郎(1961)
【34】香華(こうげ 1964)
【33】その壁を砕け(1959)
【32】おかあさん(1952)
【31】愛染かつら 総集篇(1938・39)
【30】赤い鷹(1965)
【29】人間狩り(1962)
【28】[シリーズ]事件記者(1959〜1962)
【27】地図のない町(1960)
【26】黒い画集 あるサラリーマンの証言(1960)
【25】吹けよ春風(1953)
【24】彼奴を逃すな(きゃつをにがすな 1956)
【23】我が家は楽し(1951)
【22】花ひらく娘たち(1969)
【21】麦秋(1951)
【20】浮草(1959)
【19】鉄砲玉の美学(1973)
【18】最後の切札(1960)
【17】黄色いさくらんぼ(1960)
【16】空の大怪獣 ラドン(1956)
【15】涙を、獅子のたて髪に(1962)
【14】特急にっぽん(1961)
【13】時をかける少女(1983)
【12】幸福の黄色いハンカチ(1977)
【11】お国と五平(1952東宝)
【10】可愛いめんどりが歌った(1961)/夢でありたい(1962)
【09】充たされた生活(1962)
【08】人間蒸発(1967)
【07】若い樹(1956)
【06】こだまは呼んでいる(1959)
【05】抱かれた花嫁(1957)
【04】新・事件記者 殺意の丘(1966)
【03】空かける花嫁(1959)
【02】現代っ子(1963)
【01】七人の刑事 終着駅の女(1965)

 
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